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心の時空

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サスペクト 哀しき容疑者  シネマの世界<第448話>

韓国の2014年映画「サスペクト 哀しき容疑者」(原題「容疑者」)は、祖国に裏切られ粛清の死刑執行中逃走した元北朝鮮特殊部隊エリート工作員チ・ドンチョル(コン・ユ 1979~ 鍛え抜かれた肉体と寡黙で怒りに満ちた瞳が哀切です)を主人公に本家‘ジェイソン・ボーン’ を彷彿とさせ、スパイ活劇ならではの娯楽コンセプトを全面的に取り入れた正に韓国版‘ジェイソン・ボーン’のスリルとサスペンス満載のアクション映画です。
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ジェイソン・ボーンのコピーと批評されても、ここまでやれたら「立派!」の一言です。
「ジェイソン・ボーン」は、主人公の強靭な肉体と冷徹な頭脳で自分の失ったアイデンティティを捜す物語ですが、「サスペクト 哀しき容疑者」の主人公チ・ドンチョルは、強靭な肉体と鋭い勘を駆使し、家族(妻と幼い娘)を殺した犯人に復讐する物語というプロットの違いはありますが、超人的な敏捷性と格闘能力、敵に対するすさa0212807_2253444.jpgまじい殺気には、同じものを感じます。
映画は、冒頭の数分間こそ静かな滑り出しですが、すぐにサイレンサー銃による大実業家(元脱北者)の暗殺とそれを目撃した実業家の運転手である主人公、彼と暗殺者との格闘、実業家が息を引き取る直前、彼に託した機密情報を仕込んだメガネとナゾの遺言、事件(実は諜報機関の陰謀)を目撃したゆえに国家(諜報機関と治安部隊)から殺人者にされ追われる主人公、彼を執拗に追跡する特殊部隊の大佐、脱北者の秘密結社‘北進会’の実態を取材するジャーナリスト、さらに脱北した元特殊工作員を束ねる暗殺組織などが複雑に絡み合い、主人公のa0212807_22534688.jpg現在と過去をカットバックさせながら映画は、スピーディに展開していきます。
映画の上映時間 2時間17分のほとんどが、ソウル市街を逃走する主人公と追う特殊部隊大佐との激突、彼を狙撃しようとする治安部隊の銃口、彼を狙う暗殺者たち、さらに彼のもつ機密情報を奪おうとする諜報機関などとの激しい戦闘、度肝を抜くカーチェイス、逃走と追跡で激突する格闘、銃撃の嵐の中の逃走とノンストップのアクションが、映画の最後まで続きます。
ウォン・シニョン監督(1969~)の演出は、短いカットを繋ぐことで、目まぐるしく変わる状況にド迫力の臨場感をa0212807_22572060.jpgつくり、オ・セヨン武術監督による格闘のアクション指導もリアルで迫力ある格闘シーンとして劇中の随所で見ることができます。
さらに、イ・ソンジェ撮影監督のスピーディなカメラワークは、登場人物たちの激しいアクション・シーンや度肝を抜くカーチェイスで存分に味わうことができます。(余談ながら、この映画の‘カーチェイス’を見るだけでも必見の価値があります。)
この要となる三つのコラボレーションは、見る者をスリルとサスペンスの世界にグイグイ引き込んでいきます。
主人公で家族を殺した犯人に復讐するため、ソウル市街を逃走する韓国の‘ジェイソン・ボーン’チ・ドンチョル、a0212807_2305253.jpg彼を執拗に追跡するスパイ狩りのエキスパート、ミン・セフン大佐(パク・ヒスン 1970~ 正義感が強く祖国愛溢れる反骨の軍人)と部下のチョ大尉(チョ・ジェユン とぼけたキャラクターで狂言回し役)、チ・ドンチョルに実業家の暗殺を目撃され、彼を殺人犯として追う国家諜報機関の北対策室ソッコ室長(チョ・ソンハ 裏で脱北した元スパイを束ねる秘密組織‘北進会’を指揮、私欲のため陰謀を企む)、チ・ドンチョルを理解し脱北者と北進会の実態をルポルタージュする女性ジャーナリスト、チェ・ギョンヒ(ユ・ダイン 1984~ 主人公を支援する紅一点)が主な登場人物で、それぞれに複雑な因果関係をa0212807_2315254.jpg背負っています。
映画の冒頭、「韓国に亡命した脱北者は、ひと月に数百人、年間だと数千人、総数は、2万人を超えた。 だが、その多くは、生き残るために利用されている。」と韓国の脱北者ビジネスを暗示するナレーションが、流れます。
私たち日本人の知らない根の深い南北問題を韓国社会と国家が、抱えているということでしょう。
2013年公開の韓国スパイ・サスペンス映画「ベルリン・ファィル」もベルリンを舞台に、朝鮮半島の国家対立を描いたおもしろい映画なのでお薦めいたします。
日本のお遊戯アクション映画は、いつになったら韓国レベルのアクション映画に追い付くのでしょうか?
by blues_rock | 2015-02-07 00:07 | 映画(シネマの世界) | Comments(2)
Commented by j-machj at 2015-02-07 18:47
僕は韓国の映画は、ほとんどサスペンスを観ています。
サスペンスに関しては、日本よりも韓国の方が上を行っているような気がします。

朝鮮半島は南北に分断されているので、「ジェイソン・ボーン」シリーズを韓国版に置き換えたら、さぞ面白いストーリーが作れそうですね。

ところで、今まで観た韓国の映画でハッピーエンドに終わったものは一つもありませんでした。
これもお国柄でしょうか?

いつも、「アメリカ映画ならこういう風に終わるのだろうなあ」とか想像しながら観ています。
Commented by blues_rock at 2015-02-07 19:50 x
コメント、ありがとうございます。
韓国と日本‥どこが、違うのでしょうかね。
中国映画ともテイストが、違いますよね。
国家存亡の緊張感が、国民生活や社会環境に浸透‥それが、映画にも顕われるのでしょうか?
2013年「アジョシ」、2014年「新しき世界」も見ごたえのある映画でした。