ハンガー シネマの世界<第446話>
マックィーン監督は、40代半ばにして鬼才どころか天才と称していいかもしれないイギリス映画の名匠監督です。
マックィーン監督作品に見られる映画表現への透徹したリアリズムの眼は、ビデオ映像作家・現代彫刻家・写真家など現代美術のマルチ・アートティストとして活躍してきた才能と同じ源泉に由来していると思います。
「ハンガー」は、1981年‘鉄の女 サッチャー首相’率いるイギリス政府による北アイルランドへのすざまじい弾圧とそれに抵抗するIRA服役因(IRA過激派として逮捕された政治犯)による壮絶な獄中闘争を描いた映画です。
立憲王制で貴族制度という旧態依然の国体をもつアングロサクソン支配の大英帝国イギリスながら有色アフリカ系イギリス人監督に「ハンガー」という筆舌し難いイギリス国家の恥部というべき、おぞましい記憶にまだ新しい歴史映画を撮ることのできる成熟した自由と民主主義(‘言論の自由’の尊重と権利保証)社会には、脱帽するとともに敬意を表します。
マックィーン監督の映画3作すべてに出演し今や若手名優の一人アイルランド出身の俳優マイケル・ファスベンダー(1977~)が、主人公ボビー・サンズをげっそり痩せた身体と蒼白な顔の表情で狂気迫るリアルな演技(入魂の見事な演技)を見せています。
ちなみに、マイケル・ファスベンダーの母方の祖先は、アイルランド独立のカリスマ指導者マイケル・コリンズ(1890~1922、アイルランド内戦の内部抗争で暗殺、享年31才、1996年映画「マイケル・コリンズ」)に繋がるのだとか、彼の演じるボビー・サンズを見ていると正しくマイケル・コリンズの魂が、乗り移ったとしか思えない精神性の高い演技でした。
映画は、1981年の北アイルランド、メイズ刑務所牢獄内を舞台に、カメラは、拳銃の不法所持で逮捕、収容されたIRA暫定派(全島統一アイルランド独立派)メンバーのボビー・サンズを中心に密着、彼ら囚人500人が、自分たちをアイルランド独立運動の政治犯として扱うようイギリス政府に抗議(囚人服を着ずに全裸に不潔な毛布を被るブランケット・プロテスト/糞尿を床に垂れ流し壁一面に擦り付けるダーティ・プロテスト)する模様を冷やりとしたリアリティある映像で捉えています。
この抗議行動もイギリス政府から無視され、逆に彼らは、過酷な弾圧‥殴る蹴るのすざまじい暴行と虐待(リンチ)を受けました。
同時に獄中からイギリス国会下院議員に立候補し当選しました。(上写真:不屈のボビー・サンズが死の直前に流す一筋の涙に見る者の心は張り裂けます。)
IRAとイギリス市民は、ボビー・サンズの釈放と下院議員として議会出席を要求しますがサッチャー政権は、この要求を彼が服役中の犯罪者という理由で拒否しました。
ボビー・サンズは、一切食事を拒否してから66日後に衰弱死(餓死)しました。
さらに彼の決意に同調した獄中9人の同志もハンガー・ストライキを決行し餓死、わずか30数年前のイギリスで起きたサッチャー政権の政治的犯罪は、当時のイギリス社会に大きな衝撃を与えました。
(上写真:スティーブ・マックィーン監督と主演のマイケル・ファスベンダー)
わが知人はワタクシ同様の誤りにまったく気づかず、初日に行ったそうで、けっこうこのテの観客は多かったかもしれませんね。
で土曜日「骨董じじばば」初訪問できました。スッキリとした店内&ていねいな応対にテンション高まり、ついつい長居してしまい、今更だが反省中であります★トホホのホ。
じじばば、喜んでくださり、ありがとうございます。
オーナーは、この業界にありがちな胡散臭い売らんかなの欲がなく、生半可な知識をひけらかしたハッタリもないので私も心地よくつい寛いで長居しています。