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心の時空

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6才のボクが、大人になるまで。  シネマの世界<第434話>

a0212807_2114764.jpg現在公開中の異才リチャード・リンクレイター監督(1960~ 脚本・製作)最新作「6才のボクが、大人になるまで。」は、アメリカ、テキサス州ヒューストンを舞台に両親が、離婚した家族4人とくに母と息子の物語で、6才の男の子メイソンと彼の家族に起きる人生の出来事を12年に亘って淡々と描いていく、ただそれだけの単純な映画ながら、とにかく‘すごい’の一言です。
リチャード・リンクレイター監督の映画を見るのは、2004年日本公開のコメデイ映画「スクール・オブ・ロック」(ジム・オルークが子供たちに音楽指導)以来久しぶりでした。
「6才のボクが、大人になるまで。」が、どのように‘すごい’かと言うと映画の撮影期間が、2002年から2014年までの12年間、同じ俳優が、全員同一人物を演じる長編映画としては、べらぼうに長いことです。
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リンクレイター監督は、2002年に撮影が、スタートした時6才であった主人公メイソン(エラー・コルトレーン 1996~ エラーも当時6才)が、子供の時代(映画の原題は「Boyhood」)を経て、18才の青年となり高校を卒業し将来アート写真家になるため大学に入学するまで12年間、エラー・コルトレーンとメイソンの成長を同期させて映画を
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撮り続けたことです。
幼い少年であったメイソン(エラー・コルトレーン)始め、若くして離婚した2児のングル・マザーオリヴィア(パトリシア・アークエット 1968~)、カントリー・ミュージシャンへの夢を追い続ける父親のメイソン・シニア(イーサン・
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ホーク 1970~)、メイソンより少し年長の姉サマンサ(ローレライ・リンクレイター、リンクレイター監督の実娘が出演)という4人の主人公は、もとより映画に登場する人物たちすべて12年後の2014年、リンクレイター監督が、OKを出し撮影終了を宣言するまで同一人物の出演であるというのにまず驚きます。
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映画「6才のボクが、大人になるまで。」を支える陰の主役は、紛れもなく‘12年の歳月(時間)’ですが、リンクレイター監督は、2002年まだ幼いエラー・コルトレーンに6才の主人公メイソン役として白羽の矢(オーディションで抜擢)を立て、12年後18才の青年になるまでエラー・コルトレーンの成長をメイソンの成長に同期させて撮り続けまa0212807_21231235.jpgした。
メイソンの家族も同じように母親役の女優パトリシア・アークエット、父親役の俳優イーサン・ホークの加齢、姉役の少女ローレライ・リンクレイターの成長を撮り続けました。
12年に亘るメイソンと彼の家族の物語には、かなりシリアスな出来事やトラブル(不幸なエピソード)もありますが、リンクレイター監督は、あまり深刻にならず失敗も人生の一つとしてクールに描いています。
a0212807_21233748.jpg撮影期間が、12年と長いものの毎年3~4日を目途に集中的に撮影しトータルの撮影日数は、32日だった、出演した彼らは、始まりも終わりもない‘パラレルワールド’(こちらを参考)に住んでいるようだったとリンクレイター監督は、インタビューに答えています。
メイソンは、離婚した両親(母親の二度の再婚失敗、父親の再婚と新しい弟の誕生)の都合に翻弄され、その度に味わう喪失感による寂しさ(孤独)、大人の理不尽さ(とくに義父の暴言)に耐えながら、年を追うごとに少年から青年に変貌(成長)、ビールに酔い失恋し顔の表情も精神も精悍になっていきました。
a0212807_21412267.jpgアート写真家という将来の目標をみつけたメイソンは、3度の結婚失敗(離婚)でひとりとなった母の家から大学の学生寮に移るため荷造りをしていました。
これまで母親の手を借りなければ何もできなかった子供のメイソンが、自分で身のまわりの荷物をまとめている青年メイソンの姿を見た母オリヴィアは、感極まったように泣きながらメイソンに悪態をつきます。
子育てから解放され、やっとやりたいことができる人生と自由を手に入れた、その代わりに独りになる孤独と老いていく自分が、不安でならないと号泣しながら吐露するシーンは、見ていてとても切なく、人生の哀しい宿命をa0212807_21485032.jpg感じました。
母オリヴィア役のパトリシア・アークエットと父メイソン・シニア役のイーサン・ホーク二人それぞれにリアリティある存在感は、見る者の心に共鳴する渾身の名演技と言えるでしょう。
映画のラスト、大学で知り合ったばかりの友人3人と山にハイキングに行き、一緒に行った女子学生とメイソンが、岩に座り山の景色を眺めながら二人恥ずかしそうに見つめ合ったところで映画は、終わります。
a0212807_21492115.jpg ‘人生何があろうとこれからも続くよ’というリンクレイター監督から私たちへのメッセージなのでしょうか?

(左:エラー・コルトレーンとリチャード・リンクレイター監督)
by blues_rock | 2015-01-06 00:06 | 映画(シネマの世界) | Comments(2)
Commented by j-machj at 2015-01-06 22:37
12年間、同じ俳優を撮り続けるとはドキュメンタリーですね。
でも、内容はフィクションなんでしょう。
イーサン・ホークの映画を観たのは、「ロード・オブ・ウォー(2005年)」が最後なのですが、やっぱり年を重ねてますね。
Commented by blues_rock at 2015-01-07 01:25
エラー・コルトレーン、6才から18才までの成長ドキュメンタリーとして見てもおもしろい映画でした。
アカデミー賞の作品賞か、監督賞、助演女優賞あたりを受賞するかも知れませんね。