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心の時空

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ランナウェイ・ブルース  シネマの世界<第404話>

「ランナウェイ・ブルース」(原題、The motel life、2014年3月日本公開)は、アメリカ映画にあってハリウッド映画の対極にある秀作映画でした。
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この映画の監督、アラン&ゲイブ・ポルスキー兄弟のプロファイルは、良く分かりませんが、「ランナウェイ・ブルース」は、二人の初監督作品だとか‥だとしたら、映像作家として相当の才能をもった兄弟監督の出現です。
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映画のプロットは、貧困による閉塞的な安モーテル暮らしの中で‘負の連鎖’を起しながら兄弟二人寄り添って生きる兄ジェリー・リー(スティーブン・ドーフ 1973~)と弟フランク・リー(エミール・ハーシュ 1985~、2007年a0212807_0231961.jpgショーン・ペン監督作品「イントゥ・ザ・ワイルド」 主演 こちら)の兄弟愛の物語です。
ポルスキー兄弟監督は、映画の前半、ジェリー・リーとフランク・リー兄弟の子供のころに始まる‘負の連鎖’(不運な事件)を、これでもかと言わんばかりに登場させますので、映画を見ている者は、次第に沈鬱な気持ちになり、やり切れなくなっていきます。
これは、ポルスキー兄弟監督の狙い通りの演出で、まず映画を見ている者を沈鬱な気持ちにさせ、アニメーション作家マイク・スミスのセンス溢れる、ときにセクシーでグロテスクでさえあるダイナミックなアニメーション動画の映像を映画全体の構成に用い、不遇なジェリーとフランク兄弟の奇想天外な「夢」をアニメーションで語らせ、見ている者を兄弟の心に感情移入させるa0212807_0261616.jpgことにあります。
兄弟は、幼いころから弟フランクの空想から生まれた痛快冒険物語を兄のジェリーが、イラストに描き二人で日々の暮らしの辛さを笑い飛ばして生きてきました。
映画の陰鬱な雰囲気の中で、この奇想天外なアニメーション・シーンが、何度も登場、この実現不可能な奇想天外な人生こそ兄弟には、唯一の「希望」であることを思うと無性に切なくなります。
弟のフランクには、元恋人アニー(ダコタ・ファニング 1994~ 天才子役だった彼女も20才、美しい女性になりました)という女性がいて、エルコという田舎町に移り住んで暮らしていました。
フランクは、恋人のアニーが、売春婦の母親から客をとらされている現場を偶然見たことからそれ以来アニーと会いませんでした。
a0212807_0342235.jpgフランクへのアニーから絵葉書には「いまでも愛している」と書かれていました。
兄のジェリーは、子供の時の事故で右脚ヒザから下がなくコンプレックスで屈折、安モーテルで酒に浸り、売春婦相手の自堕落な生活をしていました。
そんな冬のある夜、ジェリーが、車で少年を轢き死なせたと逃げ帰ってきました。
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ジェリーは、良心の呵責に苦しみますが、警察に行くのはイヤだと自殺未遂(‥死にきれずに不自由な右脚の太腿を撃ち抜きました)を起こしました。
a0212807_0383957.jpg警察が、兄ジェリーの廃棄した車を発見し捜査していると聞いた弟フランクは、身のまわりの一切を処分し病院から兄を連れ出して逃亡、元恋人アニーの住むエルコに向かいました。
映画のラスト、パン屋で働くアニーが、兄を失くし失意で沈んでいるフランクを窓越しに見つめ、にっこり微笑むシーンは、どんよりした厚い雲と雪で覆われたシエラネバダ山麓の寒々とした風景に、清々しい澄んだ空気が、流れるような美しい光景でした。
a0212807_039161.jpg14才のとき、孤児となったフランクに手を差しのべ温かく見守り「頭の中に隠れ家を作り、辛いことがあったら、そこへ行け。そして兄さんにも夢を話してやれ。」とフランクを励まし続け、彼が町を出る時も「胸を張って生きていけ。」と、勇気づけて逃亡用の車を安く売ってくれた中古車会社オーナー役のクリス・クリストファーソン(1936~)の渋い演技も秀悦でした。
a0212807_045415.jpg映画のサウンド・トラックでボブ・ディランとジョニー・キャッシュの名曲「北国の少女」が流れていたのも印象的でした。
アラン&ゲイブ・ポルスキー兄弟(右写真)の初監督作品である「ランナウェイ・ブルース」は、ローマ国際映画祭で高く評価され4部門で受賞、ポルスキー兄弟の才能とセンスが、随所に見られる秀作映画です。
by blues_rock | 2014-10-15 00:15 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)