ブログトップ | ログイン

心の時空

yansue.exblog.jp

a day in my life

ローレ(さよならアドルフ)  シネマの世界<第400話>

a0212807_20575916.jpgオーストラリア・ドイツ・イギリス合作の映画「 Lore(ローレ)」は、2014年日本公開時「さよならアドルフ」のタイトルで上映されました。
監督・脚本は、オーストラリアの女性監督ケイト・ショートランド(1968~)で長編映画2作目の監督作品ながらショートランド監督のしっかりした信念を感じる映画です。
映画のプロットは、ナチスドイツによるユダヤ人および反ナチスの人々に対するホロコースト(大量虐殺)を背景にした戦争映画ですが、ショートランド監督は、声高に人道主義や反戦を叫んでいるわけではありません。
ナチズム教育を受けた14歳のドイツ人少女ローレ(サスキア・ローゼンタール 1993~ ローレを熱演)の目を通して見たヒトラー独裁国家風景を描いていきます。
a0212807_2101289.jpg
歴史の目撃者としての少女ローレの目は、イタリア映画「やがて来たる者へ」(こちら)の主人公少女マルティーナの目と同じクールな視線で大人の現実世界を冷ややかに見つめます。
a0212807_2121088.jpg
14歳の少女ローレは、ドイツ南部シュヴァルツヴァルトの邸宅でナチスドイツ高官の両親と妹弟の7人家族で暮らしていましたが、1945年ヒトラーの自殺により全面降伏したナチスドイツ敗戦で両親と生き別れしました。
a0212807_2134763.jpg
長女ローレは、妹・双子の弟・乳飲み子の弟を連れて、連合国(アメリカ・イギリス・フランス・ソ連)に分割占領された敗戦後の荒廃したドイツ国内を母親に言われたとおり祖母の住む北部都市ハンブルグまでの900㌔を徒歩で縦断
a0212807_2183697.jpg
するという過酷な旅に出ました。
ショートランド監督の脚本と演出は、終始ナチスドイツ高官の娘であったローレの視線で、ナチスドイツ崩壊後の
a0212807_21105940.png
リアルな現実を見つめていきます。
旅の途中、ローレは、街に貼り出された新聞の大きな見出し「責任は国民にもある」とナチスドイツの身の毛もよ
a0212807_21132588.jpg
だつユダヤ人大虐殺(ホロコースト)の残酷な写真を見て動揺、呆然と立ち尽くしました。
ローレは、両親が関わったホロコーストにショックを受け、自分の信じていた価値観を根底から覆されました。
a0212807_211537100.jpgローレと幼い妹弟たち5人の旅は、危険に満ち食料の確保もままならない飢餓の連続でした。
そんなローレたちを救ってくれたのが、皮肉なことにユダヤ人青年のトーマス(カイ・マリーナ 1989~)でした。
‘黄色い星’のユダヤ民族証明書をもつトーマスに助けられながらローレたちは、ソ連の支配する地域を一路ハンブルグへ危険なa0212807_21402190.png旅を続けました。
双子の弟の一人を殺され必死の思いでハンブルグの祖母の家に着いたもののローレの心は、「自分たちに不都合な真実」を無視する大人たちへの怒り、憎しみ、悲しみで渦巻いていました。
ローレは、両親と同じように自分たち妹弟(きょうだい)に旧い規律を躾(しつ)けるため、居丈高に叱る旧態依然の祖母に激しく反発、母の形見として苦難な旅の途中でも捨てず大事に持っていた小さな陶製の小鹿を床に投げつけ足で踏みa0212807_2141135.jpgつぶしました。
ラストシーンで見せるローレの無表情な喪失感は、見る者の心を暗くやり切れなくさせます。
ローレとトーマスの感情を何度もアップで映すショートランド監督の演出も秀逸です。
ケイト・ショートランド監督は、「ハンナ・アーレント」(こちら)のテーマであった徹底的に現実を直視する批判精神、つまりリアリズムの真髄を「ローレ(さよならアドルフ)」で
a0212807_2137106.jpg
見せてくれました。
ナチスの猿マネのようなチンケな格好で愚かなヘイトスピーチをする輩(やから)に見てもらいたい映画です。
 
by blues_rock | 2014-10-02 00:02 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)