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心の時空

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わたしはロランス  シネマの世界<第380話>

カナダのフランス語文化圏ケベック州モントリオール市は、才能豊かな映画監督を輩出する映画の街です。
カナダ映画の俊英ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督(1967~)が、撮った2011年秀作映画「灼熱の魂」(こちら)や2014年作品「プリズナーズ」(こちら)のすばらしさに感動していたら、グザヴィエ・ドラン(1989~)という天才と呼ぶに相応しい才能あふれる新鋭気鋭の映画監督が、彗星のように現れました。
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グザヴィエ・ドラン監督の2012年カナダ・フランス共同作品「わたしはロランス」は、ドラン監督が、23才の時に撮った3作目の映画で、1作目、2作目のように主演はしいませんが、監督・脚本・製作総指揮(ガス・ヴァン・サント監督も参加)をしています。
グザヴィエ・ドラン監督の長編映画デビューは、2008年19才の時に製作発表した「マイ・マザー」です。
a0212807_2302824.jpgドラン監督は、このデビュー作品から監督・脚本・製作さらに主演という映画製作の至るところで才能あふれる早熟な天才ぶりを発揮しています。
「わたしはロランス」は、2時間48分と長尺ながら‘性同一性障害(トランスジェンダー)’のロランス(メルヴィル・プポー 1973~)を主人公に、ロランスを‘男性’と信じ10年の間、恋人であった‘女性’フレッド(スザンヌ・クレマン 1969~)との愛の物語です。
ロランスの恋人フレッドの狼狽と動揺、保守的な夫との間で抑圧された家庭環境のなか、‘男の子’としてロランa0212807_2315959.jpgスを育てた母ジュリエンヌ(ナタリー・バイ 1948~ フランソワ・トリュフォー監督作品で私の最も好きな1977年映画「恋愛日記」に出演)の屈折した心理をとおして、‘女性にカミングアウト’したロランスの複雑なトランスジェンダー心理‥「隠していた女性の心を解放し、今のままの自分で女装したい、ゲイではなく恋愛の対象はあくまで女性」をクールに描いています。
この映画でフレッドを演じたスザンヌ・クレマンは、カンヌ国際映画祭‘ある視点’部門で最優秀女優賞を受賞しています。
a0212807_2351390.jpgドラン監督は、19才で長編映画にデビューして4年、この間23才で撮った3作目の「わたしはロランス」も入れ3作連続して彼の作品をカンヌ国際映画祭が受け入れた才能あふれる新進気鋭の映像クリエーターでもあります。
映画のプロットは、女性になりたい男性とその恋人の10年にわたる愛を描いたラブ・ストーリー‥モントリオールで国語教師をしているロランス(男性)は、長年の恋人フレッド(女性)に「ボクは女になりたい。それでもキミを愛している。もう自分を偽りたくない。」と告白しました。
a0212807_236111.jpgフレッドは、たいへん驚きロランスを非難しますが、それでも彼を理解しようとします。
ロランスとフレッドという長年愛し合ってきた恋人同士(男女)に突き付けられた現実をめぐり激しく言い争うシーンの迫力は、リアルな情感がありました。
映画の中盤からドラン監督の独特な演出と個性的な映像シーンに目を奪われます。
ぜひ映画をご覧になって美しい映像とシュールなシーンの連続(シークエンス)を堪能して欲しいと思います。
たとえば、しゃべり続けるロランスの口から一匹の蝶が羽ばたいて行ったり、部屋のソファに呆然と座るフレッドa0212807_2444625.jpgの頭上から滝のような水が流れ落ちたり、オシャレして散歩している二人に空から色とりどりの洗濯物が、降ってきたり‥二人の現実は、案外こんな感じかもしれないと見る者に想像させる見事な表現でした。
別れたフレッドからの手紙をロランスが読むシーンでは、その手紙をスクリーンいっぱいに映し出して見せるドラン監督の演出も冴えていました。
映画のラスト、髪を短く切ったフレッドが、映画の撮影現場でスタッフとして働いているところに、丸刈り頭のロラa0212807_2565123.jpgンスが、微笑みながら訪ねて来ます。
一旦別れた二人が、ヨリを戻して‘新しい関係’を始めたのだな‥と映画を見ている者を一瞬思わせて、すぐにこれは、映画の冒頭で二人が、出会うシーンだと気づかせて映画は終わります。
この映画「わたしはロランス」にドラン監督の主演こそありませんが、監督・脚本・編集・衣装を一人で担当、弱冠23才の天才監督グザヴィエ・ドラン、恐るべしです。
by blues_rock | 2014-08-12 00:02 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)