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心の時空

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a day in my life

映画「シリアナ(SYRIANA)」にアラブ世界の今日を見る

アメリカ映画「シリアナ(SYRIANA)」(こちら記事後半)は、2006年日本公開のスパイ・サスペンス映画です。
映画が、製作された9年前の2005年当時よりアラブ世界は、さらに血生臭くなりより複雑に捻じれています。
a0212807_1541842.jpg映画「シリアナ」が、示唆した当時のアラブ世界は、油田争奪を巡りさらにパワーポリティックス化し、絵空事ではないのかもしれません。
いまアラビア半島では、イスラム教シーア派とスンニ派の宗教対立(シーア派とスンニ派の違いが分からない方はこちら参照)に、遊牧民族クルド人の独立運動が、重なりイスラム世界は、骨肉の争いというか‥宗教・民族戦争状態です。
イラクでは、イラク戦争後、国内のシーア派とスンニ派が、イスラムの主導権争いで激しく対立、イラク国家分裂の危機に瀕しています。
a0212807_155780.jpgそのイラク(アラブ人)シーア派をイラン(ペルシャ人)シーア派が支援する一方、北部イランで暮らすスンニ派のクルド人たちは、自分たちの遊牧エリアの地下に膨大な油田があることを知り、その原油利権をめぐりシーア派イラク政府とこれまた激しく対立、クルド人国家「クルディスタン」建国を目指し内戦状態です。
a0212807_15123123.jpgイラクと国境を接するスンニ派の多いトルコ・シリア領内にいるクルド人もこれに連帯しゲリラ活動で参戦、アラブイスラム世界は、混沌としてまったく先の読めないカオス状態となりました。
さらにイスラエルとパレスチナ・レバノンの紛争激化が追い打ちをかけるようにアラブ世界は、火薬庫でマッチを擦るような危険極まりない一触即発の危機状態が、現在(いま)も続いています。
a0212807_1519896.jpgイスラム国家の中でアメリカと友好的なのは、トルコ、エジプト、サウジアラビアなどで「敵の敵は味方」戦略を行使しながら、映画「シリアナ」のプロットでは、アメリカ政府(=アメリカ石油資本)が、アラブ諸国を支配する国家戦略として「イラン+イラク+シリア(こちら)を統合した新国家‘シリアナ’建国」を画策するストーリーでした。
私は、映画を見て余ほど興奮したのか翌日の2006年(平成18年)3月10日、友人に映画「シリアナ」についてメールa0212807_1519532.jpgしていました。
(以下メール)昨日、通勤帰り銀座で道草し封切りを心待ちにしていた「シリアナ(SYRIANA)」という映画を見ました。
覇権国家アメリカを知るだけに、「シリアナ(SYRIANA)」は、映画ながらリアリティのあること、驚きました。
他のどんな芸術表現や画像媒体方法をもってしても決して表現できない映画ならではの映像表現をフルに生かした真実(リアル)がありました。
a0212807_1525985.jpg10年に一本の傑作というに値する映画でしょう。
「アラビアのロレンス」が、今でも(名画を超える)傑作であるのと同じ意味合いです。
「アラビアのロレンス」は、何度見てもピーター・オトゥールのゲイっぽいロレンスの名演もすばらしいのですが、現代中近東の混沌を招いたヨーロッパ、とくに日沈むことのない大ブリテン帝国イギリスVS新興ナチスドイツ第三帝国、そして滅亡a0212807_15341557.jpg寸前のオスマントルコ帝国VS部族抗争アラブ遊牧民を操り、国益(油田確保)というエゴイズムから戦争する政治家(=利権資本家)たちには、愛国も真実も宗教も存在せず‘利権こそ正義’という厳然たる事実が、国家の現実であることを教えてくれます。
「SYRIANA」という単語は、辞書には載っていません。
アメリカの国家戦略シンクタンクが、イラン+イラク+シリア=新国家‘シリアナ’を創るべく画策・陰謀・謀略するa0212807_1535234.jpgための隠語だとか‥それを映画にするアメリカという国の懐の深さと「本当の表現と言論の自由」の存在、そのためのリスク、例えば自らが選んだ大統領さえ暗殺するという民主国家アメリカは、ものすごいパワーをもった多民族・多宗教・多価値観の合衆国です。
a0212807_1653887.jpg湾岸戦争での海兵隊の疲弊を描いた「ジャーヘッド」、イスラエルのアラブに対するサイコな怨念と国家執念を描いた「ミュンヘン」(こちら)など‥国家の陰謀を主題にしたおもしろい外国映画は、結構ありますが、日本映画にこの種のダイナミックな映画はなく、あったとしても子供ダマシのような薄っぺらでリアリティのまったくない映画なので見る気になりません。 
その点、有事の朝鮮半島にある韓国の映画人は、時おり凄身(すごみ)のあるスパイ・サスペンス映画を製作していますね。 ではまた。
by blues_rock | 2014-08-10 00:10 | 経済/政治/世界 | Comments(0)