ブログトップ | ログイン

心の時空

yansue.exblog.jp

a day in my life

私の男  シネマの世界<第371話>

秀作「海炭市叙景」(こちら)を撮った日本映画の俊英、熊切和嘉監督(1974~ 40才)最新作「私の男」のプロットは、父と子(娘)の近親相姦という‘禁忌(タブー)の愛’を軸にしてアガペー(家族愛)とエロス(性愛)、さらに
a0212807_23193284.jpg
‘二人の関係’に介入して来る他人を遮断するために二人が犯す2件の殺人を横軸にしています。
近親相姦には、双方に明確な性愛の意思がありますので、近親姦(一方が被害者となるレイプ)とは、明らかにa0212807_2320436.jpg違います。
熊切監督は、「私の男」で遺伝学的に‘禁忌(タブー)’とされている‘父と娘の愛’にギリシャ神話のような普遍性をもたせ、北海道(紋別)の雪原とオホーツク海の流氷を二人の舞台に見立て、父親と娘のアガペー(家族愛)とエロス(性愛)をリアリズム溢れる映像で撮り、なかなかの秀作映画でした。
a0212807_23245526.jpg「私の男」映画製作の主力スタッフは、「海炭市叙景」と同じ顔ぶれで、脚本の宇治田隆史(1975~)、撮影監督に近藤龍人(1976~)、音楽をジム・オルーク(1969~)と熊切監督の盟友たちが担当しています。
特筆すべきは、この映画の中心人物である花役の二階堂ふみ(1994~)が、すばらしく近親相姦というインモラルな価値観など歯牙にもかけず自らの愛にのみ忠実な娘を体当たりで演じています。
a0212807_23291731.jpg花は、10才のとき奥尻島地震の津波で家族を失い、孤独と恐怖、得体の知れない不安の中で、被災地で偶然出会った遠い親戚にあたる海上保安官の淳悟(浅野忠信 1973~ やさしくも憂いのある自堕落な淳悟を好演)の養女になりました。
花と淳悟は、底知れぬ心の孤独と喪失感を抱えた空虚さ中で‘お互い家族になる’ために寄り添うように暮らしていました。
a0212807_038769.jpg花は、次第に少女から娘に、子供から大人(女)に変化していきます。
思春期になった花は、無垢で屈託のない可愛らしい娘ですが、時に父親である淳悟に直情的に甘え、男である淳悟の性本能を翻弄するようになりました。
a0212807_23311169.jpg若い時から虚無的で自堕落な生活をおくる淳悟ですが、戸惑いながらも娘の花から引きずられるように花の求める性愛に応じるようになりました。
そんなある日、二人を見守ってきた地元の名士大塩老人(藤竜也 1941~ 存在感のあるリアルな演技がすばらしい.)に‘二人の関係’が、分かってしまいました。
a0212807_23321287.jpg
淳悟の愛人であった大塩老人の娘小町(河井青葉 1981~美しい肢体)もまた花と淳悟の親子関係が、普通ではないことに気が付いていました。
a0212807_0195043.jpg花は、当時17才の淳悟が、奥尻島に住む遠縁の親戚宅に居候をしているとき、親戚の娘との間にできた子供でした。
花の行く末を心配した大塩老人は、花を説得し淳悟と切り離そうとしますが、花から拒否され、それどころか流氷の上に大塩老人を置き去りにし凍死させてしまいました。
a0212807_0201816.jpg真冬の北海道の雪原とオホーツク海を埋め尽くした流氷の寒々としたシーンは、淳悟の葛藤と刹那、さらに花の無邪気な愛への渇望と相俟って心に残る美しい映像でした。
原作は、女性作家桜庭 一樹(1971~)の直木賞受賞小説「私の男」です。
熊切監督は、「私の男」をシリアスなヒューマン・ドラマと禁忌の愛(禁断のラブ・ストーリー)に主人公二人の秘密に関わる2件の殺人を絡ませてサスペンス映画にしました。
熊切監督の盟友近藤撮影監督は、花の奥尻島での少女時代を16㍉フィルム、流氷の街紋別での思春期から娘時代を35㍉フィルム、成人した花が東京で淳悟と暮らす現在をデジタルで撮影、花の成長に合わせ、その時代の空気を映像に撮り込みました。
「私の男」は、モスクワ国際映画祭でグランプリを受賞、淳悟役の浅野忠信が、主演男優賞を受賞しています。
by blues_rock | 2014-07-12 00:12 | 映画(シネマの世界) | Comments(2)
Commented by E・O(エイジ) at 2014-07-12 00:10 x
なんだか重いテーマですねぇ!作家の生い立ちに親から否定され、ほめられたことがない!そんな精神的なバランスの悪さがあるんですかねぇ~?親から虐待された子供は、親をかばうことがあるらしいですけど、それは「けなげ」なのではなく、それでも親元でしか生きる場所がない!幼い子供でも保身にはしる究極の選択なんでしょう。歌手の麻丘めぐみさんは、なぜか母親から彼女だけ否定的な目でみられていたらしく、おおきな精神的問題をかかえていたらしいですょ。
Commented by blues_rock at 2014-07-12 00:55
子供は、親からハグされ、褒められるだけで、幸せになれるのではないでしょうか‥親からネグレクト(否定)され、自分の居場所を喪失したまま成人すると破壊(たとえば戦争を)したがる男、独占欲の強い嫉妬深い女になるのではないでしょうか?