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カストラート  シネマの世界<第368話>

オペラ好きの方にお薦めしたい映画が、ベルギーの映画監督ジェラール・コルビオ(1941~ 原案・脚本は妻アンドレと共同)による1994年公開映画「カストラート」で、18世紀のヨーロッパに実在したオペラ史上最も有名なカストラート、ファリネッリ(本名カルロ・ブロスキ1705~1782)の半生を描いた映画です。
a0212807_21155666.jpgカストラートとは、去勢されたオペラ歌手のこと、天使のようなボーイソプラノの美声をもつ少年が、声変わりする前に去勢(男性の性機能を切除し男性ホルモンの分泌を除去)し、大人の肺活量とボーイソプラノの声、さらに鍛錬された歌唱技法をもつ‘カウンターテナー’のオペラ歌手のことです。
ヨーロッパでは、中世から20世紀初めまで現実にあったようで、今では犯罪なので考えられませんが、絶対王政社会の貴族趣味や聖歌隊から女性(女声ソプラノ)を排除したキリスト教会の因習でカストラートは、非常に人気があり親の金銭欲や教会の都合で優れた数多のボーイソプラノ少年が、去勢手術されカウンターテナーのカストラートになりました。
その中でもファリネッリは、類稀(たぐいまれ)な美しい声と歌唱の実力、容姿端麗、性格も良く3オクターブ半のa0212807_21163523.jpg声域と息継ぎなしでの長い単音発声などで一斉を風靡、中世ヨーロッパの女性たちを熱狂させたそうです。
事実、ヨーロッパ各地にカストラート、ファリネッリを絶賛する当時の記録が現在も残っているそうです。
コルビオ監督は、映画を見る者に不生出のカストラート、ファリネッリの美しいカウンターテナーを聴かせながらファリネッリ誕生までを艶やかにドラマチックに描きます。
ファリネッリを演じるのは、イタリアの俳優ステファノ・ディオニジ(1966~)、カウンターテナーの歌声は、フランスのIRCAM(イルカム=フランス国立音響音楽研究所)の‘ファリネッリ’と名付けられたコンピューター音響装置です。
ステファノ・ディオニジのファリネッリに成りきった演技も見事ですが、カストラート、ファリネッリの美しいカウンターテナーを再現したIRCAMの超絶技巧もすばらしく聴き応えがありました。
a0212807_21191130.jpgコンピューター音響装置ファリネッリの高音域は、女声ソプラノ歌手、低音域は、男声カウンターテナーで録音し、IRCAMのファリネッリで音声変換しています。
さらに女声ソプラノ部分の音声フォルマント(声紋周波数)を男声カウンターテナーの声質に限りなく近づけ、ステファノ・ディオニジ演じるファリネッリの歌う映画映像と重ね合わせ映画の中で、ステファノ・ディオニジ=ファリネッリの歌う超高音域の美しいカウンターテナーを聴くことができます。
物語は、年の離れた弟カルロ(後のファリネッリ)の美しいボーイソプラノを活かし自分の楽曲を弟に歌わせ有名a0212807_21195372.jpgになりたい作曲家の兄リカルドは、カルロを落馬事故に遭わせケガの治療に見せかけて去勢、カストラートとして育てました。
兄リカルドに弟カルロほどの音楽的才能はなく、ファリネッリと改名したカストラートの弟カルロの美声(カウンターテナー人気)を聴きに来た人たちで劇場は、いつもいっぱいでした。
一方、大作曲家ヘンデル(1685~1759 ドイツ出身でイギリス帰化)の劇場は、ファリネッリに人気を奪われ閑古鳥が鳴いていました。    (下絵画:ファリネッリの肖像画)
a0212807_2127578.jpgカストラートに偏見をもつヘンデルは、ファリネッリにイヤミを言ったり、舞台裏で歌う前のファリネッリにプレッシャーをかけ動揺させて歌えないようにするなど姑息な嫌がらせをしますが、芸術(音楽)に純粋なファリネッリは、ヘンデルの荘厳な楽曲(バロック音楽)を高く評していました。
ファリネッリは、兄リカルドの作曲する楽曲に満足しなくなり、ヘンデルの曲を歌いたいとヘンデルに申し出ますが、彼は、歌えるもんなら歌ってみろ、と言わんばかりの態度でファリネッリ人気の前にしぶしぶ承知、公演当日、劇場に溢れる観客の中に、ヘンデルの姿もありました。
カストラートのファリネッリが、カウンターテナーで歌う自分の歌曲(「私を泣かせてください」)を聴いたヘンデルは、そのすばらしさに感動し失神してしまいました。
(そのシーンが こちら です。)
コルビオ監督は、人気絶頂のファリネッリの現在と去勢前のカルロ少年の過去を交差(カットバック)させながら描いていきます。
オペラ好きの方は、大いに楽しめる映画と推察しますので、今ではもう聴くことのできない究極のカストラート・オペラをぜひ映画「カストラート」で堪能してください。
by blues_rock | 2014-07-04 00:04 | 映画(シネマの世界) | Comments(2)
Commented at 2014-07-04 19:52 x
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Commented at 2014-07-05 20:47
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