バウンド シネマの世界<第371話>
「バウンド」は、ラナ・ウォシャウスキー(1965~ 性同一性障害で女性に性転換する前はラリー)とアンディ・ウォシャウスキー(1967~)姉弟監督の初監督(脚本・製作総指揮も同姉弟監督)作品ながら‘栴檀は双葉より芳(かんば)し’の喩(たとえ)どおりフィルム・ノワール映画をスタイリッシュな演出と映像で一級のクライムサスペンス映画にしました。
マフィアの愛人ヴァイオレット役ジェニファー・ティリー(1959~ マイナーなインディペンデント系からメジャーの大作まで出演、何でもこなす名女優、ポーカーのスペシャリスト)の少し甲高い甘ったるい声とタトゥーだらけの元窃盗犯で刑期5年を終え出所した女コーキー役ジーナ・ガーション(1962~)のマッチョな立ち姿が、魅力的な映画でした。
映画の冒頭、エレベーターの中で塗装道具に作業服のコーキーが、紅い口紅にセクシーなドレスを着たヴァイオレットに見つめられながらマフィア幹部シーザー(ジョー・パントリアーノ 1951~ 「マトリックス」にも出演)と乗り合わせるシーンは、事件発生を予感させるイントロとしてすばらしい演出でした。
コーキーとヴァイオレットは、エレベーターで出遭った瞬間、お互い一目惚れし恋に落ち、シーザーの目を盗みながら二人は、レスビアンセックスを重ねました。
ある時、ヴァイオレットの情夫シーザーが、マフィアの金200万㌦をめぐる事件に巻き込まれました。
ヴァイオレットは、コーキーにこの200万㌦を奪って二人で逃げようと提案しました。
シーザーとヴァイオレットが、住む隣の部屋を改装しているコーキーは、マフィアの金を横取りする危険(報復)に躊躇するものの、盗む気になっているヴァイオレットの手引きでシーザーの部屋から200万㌦を盗み出しました。
「テルマ&ルイーズ」を彷彿とさせる映画「バウンド」ですが、ウォシャウスキー姉弟監督の演出は、どこまでもスタイリッシュな「コーキー&ヴァイオレット」でした。
映画の最後「テルマ&ルイーズ」(1991年 リドリー・スコット監督)では、二人車の中で手をつなぎ、自分たちの世界へのアクセルを踏み崖からダイブしますが、「バウンド」は、コーキーとヴァイオレットの二人、真っ赤に塗り替えたトラックの運転席でしっかり手をつなぎ、熱いキスをして、マフィアから横取りした200万㌦を積み、二人の新天地に向け出発するというクールな演出が、爽快でした。