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心の時空

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魔王  シネマの世界<第349話>

a0212807_222524.jpgアメリカの名優ジョン・マルコヴィッチ(1996~)主演によるフランス・イギリス・ドイツ共同制作映画「魔王」(原題 The Ogre 「人喰い鬼」という意味)は、寓話オペラのような巧妙な演出に魅せられました。
監督は、ドイツの名匠フォルカー・シュレンドルフ監督(1939~)で、シュレンドルフ監督作品で私の印象に残るのは、名作「ブリキの太鼓」(1979)とこれも秀作「九日目」(2004 日本では劇場未公開)でした。
製作総指揮をジェレミー・トーマス(1949~ 「十三人の刺客」製作 こちら)とクロード・ベリ(1934~ 「愛と宿命の泉 」製作 こちら)の二人が、担いました。
フランスの作家ミッシェル・トゥルニエ(1924~)の長編小説「魔王」(1970年発表 ゴンクール賞受賞)を原作に、名脚本家のジャン=クロード・カリエール(1931~ 1988年傑作「存在の耐えられない軽さ」こちら、2006年秀作「宮廷画家ゴヤは見た」こちら などの脚本担当)が、脚本を書き、音楽をイギリスの作曲家マイケル・ナイマン(1944~ 1989年「仕立て屋の恋」、1990年「髪結いの亭主」、1993年「ピアノ・レッスン」)など映画「魔王」の製作に関わったメンバーは、実に錚々たる顔ぶれです。
a0212807_2293192.png1939年ドイツは、独裁者ヒトラー率いるファシズムの新興勢力ナチスが、旧秩序であるプロイセン貴族体制を崩壊に追い込んでいました。
そのころパリ郊外で暮らしていた少年アベルは、純真で臆病な子供でしたが、なぜかガキ大将とウマが合い一緒にいることでイジメにも合いませんでした。
a0212807_22103791.jpg子供の心のまま大人になったアベルは、自動車工となり仲良くなった少女が、車の運転をさせるよう頼んだとき、危ないからと断りました。
これを逆恨みした少女は、アベルから性的虐待をされたと警察に訴え、彼は身に覚えのない強姦罪で逮捕されフランス軍兵士として戦場へ送られました。
戦場のドサクサに紛れ逃亡したアベルは、ドイツの広大な森を彷徨いながら、どこに行ってもなぜかその土地のa0212807_22162039.jpg人にすんなり受け入れられる特殊な才能を発揮しました。
森の奥深くにあるゲーリング(独裁国家ナチスドイツの国家元帥)の館に辿り着いたアベルは、自分を恐れない(アベルは絶対権力者ゲーリングの怖さを知らなかった)ゲーリングから可愛がられました。
見知らぬ人から好かれ命令に素直に従うアベルを利用しようとナチス将校は、森の中にあるナチス少年兵教育施設に収容する少年兵a0212807_22251833.jpgの徴用(誘拐)と教育係を命じました。
アベルは、馬に乗りマントを翻(ひるがえ)して村々をまわり少年たちを次々に誘拐、少年をさらって走り去る彼を村人たちは、“魔王”(人喰い鬼)と呼び恐れました。
ナチスドイツは、拉致した少年たちをヒトラーの兵隊に洗脳、敗戦を目前にしながら銃器の扱いも満足にできない彼らを防衛の最前線に送りました。
a0212807_22365814.jpgアベルの目の前でバタバタ倒れ死んでいく少年たちにショックを受け動揺した彼は施設に逃げ帰り部屋の隅でうずくまるユダヤの少年を見つけると肩に担ぎ森の中に逃げ、川を渡ろうとしますがアベルの足取りは、重くヨロヨロとしながら歩き続けました。
この川を渡るシーンは、キリスト教の聖クリストアァーが、少年に姿を変えた重いキリスト(人間の罪の重さ)を肩に担ぎ、よろめきながら川の中を歩いたという言い伝えをシュレンドルフ監督は、表現しました。
by blues_rock | 2014-05-30 23:32 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)