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心の時空

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a day in my life

漆(ウルシ)の話(前編)

漆(ウルシ)で作られた器(ウツワ)を漆器(シッキ)と呼びますが、古来よりわが国では、冠婚葬祭など‘ハレの日’に漆器を納戸(ナンド)から恭(うやうや)しく取り出して大切に使ってきました。(下写真:赤漆椀)
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中世の朝廷に仕えた公家、室町時代以降の武家大名たちは、漆器(シッキ)から身の回りの生活道具、家具調度、室内装飾に至るまで漆製品を揃えてきました。(下写真:尾形光琳「蒔絵螺鈿硯箱」 東京博物館蔵)
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英語では、漆器のことをJAPAN(磁器をCHINA)と云いますから、16世紀に来日した宣教師が、帰国するとき一緒に漆器や漆芸製品をヨーロッパに持ち帰って以来、日本の漆器と漆芸製品は、ヨーロッパの王侯貴族の間に漆(ウルシ)の話(前編)_a0212807_21393050.jpgJAPANブランドの高級生活道具、調度品として広く普及しました。
日本産漆(漆の木の樹液)は、江戸時代末期(幕末)に採取(生産)された1,100㌧をピークに減少、一方、漆の消費量のピークは、昭和11年の2,138㌧が最高ながら国産の供給量は、全体の2%、98㌧に激減していました。
平成25年現在わが国の漆消費量は、わずか58㌧、国産品は‘生正味漆’など高品質漆向けに生産されている1.5㌧のみで、そのうちの70%を岩手県(二戸)が生産しています。
漆(ウルシ)の話(前編)_a0212807_2159171.jpg日本で消費される漆のほとんどが中国四川省と周辺の山間地で生産されたもので漆の木から掻かれた(採取された)漆は、四川省の成都に集められ日本に輸出されます。
漆(ウルシ こちら)は、縄文時代から生活の中で使われてきました。(右写真:青森県三内丸山遺跡から発見された5,500年前の‘縄文ポシェット’)
漆の特長は、何といっても‘100%天然素材’であること、1本の漆の木から200㌘と極めて少なく貴重であること、循環型自然生態系のメカニズム「萌芽(ほうが)」による栽培‥漆の木を伐採しても、切り株の根元から新しい芽が出て成長(これを萌芽と呼ぶ)何回も再生産可能なことです。
漆の効能としてすでに衆知されているのが、漆塗膜の抗菌・殺菌効果です。
漆塗膜された容器は、高濃度の酸やアルカリなどの化学薬品、アルコール薬品、化石燃料液体に極めて強く、簡単に化学反応しないことも実証されています。(後編に続く)
by blues_rock | 2014-05-23 21:30 | 金継ぎ/古美術/漆芸 | Comments(0)
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