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心の時空

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a day in my life

あ、春  シネマの世界<第340話>

「あ、春」(1998)は、名監督相米慎二が亡くなる3年前、50才のときに撮った心温まるヒューマン映画です。
「魚影の群れ」、「台風クラブ」が、相米監督初期の秀作なら「あ、春」は、円熟期の秀作と言えます。
相米監督は、「あ、春」でも執拗なカメラの長回しで演技者の一瞬一瞬の動きや表情を逃がさないよう撮り続け、きちんとしたフレーミングと映画ならではの語り口でストーリーを展開していきます。
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脚本は、人間ドラマの名人である脚本家中島丈博(1935~)が担当、登場人物にそれぞれ心の襞(ひだ)をもたせ丁寧に描き分けました。
映画のプロットは、家族(というもの)です。
証券会社で働く韮崎紘(ニラサキヒロシ 佐藤浩市 1960~)は、妻瑞穂(ミズホ 斉藤由貴 1966~)の実家で妻と息子a0212807_2344139.jpg充(ミツル)、義母郁子(イクコ 藤村志保1939~)の4人幸せに暮らしていました。
ある冬の夜、紘が会社から帰宅する途中、母公代(キミヨ 富司純子1945~)から父親は、自分の幼い頃死んだと聞かされていた父笹一(ササイチ 山崎努 1936~ 怪優ぶりを如何なく発揮)が、突然目の前に現われました。
浮浪者にしか見えない父親の笹一と名のる初老の男を紘は、俄かに信じませんでした。
とにかく今晩一晩泊めて欲しいと懇願され自宅に連れて帰りました。
a0212807_23185938.jpg笹一の話を聞く自分の幼いころの記憶と符合するものがありました。
母公代に連絡すると公代は、悪びれるふうもなく笹一は死んだものと思っている、相手にするな、と言うだけでした。
笹一が、父親と分かった紘は、笹一から一週間置いてくれと頼まれると無碍(むげ)に追い出すわけにもいかず、妻瑞穂や義母の郁子に肩身の狭い思いをしながら家に置くことにしました。
しかし、居候の笹一は、遠慮するどころか、病弱な瑞穂の前でタバコを吸うわ、真っ昼間から酒は飲むわ、幼い孫の充にサイコロ(チンチロリン)を教えるわ、郁子の風呂を覗くわ、でついに紘の堪忍袋の緒が切れ、笹一をa0212807_23273660.jpg追い出しました。
数日後、紘は、妻の瑞穂から笹一が、近くの公園でホームレスと一緒に暮らしていると聞き仕方なく笹一を自宅に連れ戻りました。
母公代は、息子紘の家を訪ね、笹一と紘に向かい「紘は、笹一がマグロ漁に出ているとき他の男との間にできた子供だ」と告白しました。
紘の心中は複雑でしたが、憶えのある笹一はあっさりとそれを認め、紘に一言「世話になった」と礼を言い出て行こうとしたとき、血を吐いて倒れました。
a0212807_2351129.jpgもう治療の施しようのない末期の肝硬変でした。
そんな折も折、紘の勤める証券会社が、倒産しました。
それまで何の変哲もない家族が、突然彼らに降りかかった出来事に翻弄され、右往左往しながら少しずつ絆を強め変化していく様子を描いた「あ、春」は、中島丈博の脚本の良さと相米慎二監督の演出の上手さが光る映画でした。
(左写真:相米慎二監督 1948~2001没 享年53才)
by blues_rock | 2014-05-16 00:06 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)