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心の時空

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ある過去の行方  シネマの世界<第336話>

a0212807_1093850.jpgイランの名映画監督アスガー・ファルハディ(1972~)の最新作(監督・脚本)となるフランス映画「ある過去の行方」が、現在福岡天神のKBCシネマで公開されています。
芸術や娯楽を禁じるイスラムの国イランでの映画製作には、宗教警察の厳しい検閲があり、映画館の上映も宗教警察の厳しい監視の目が光り、好きな映画を自由に見ることはできません。
その何かと難しい制約の中でイランの国内外で情熱を注いで映画芸術に取り組んでいるイランの人たちもいます。
その代表格が、いまや世界的に知名度の高いイランの名監督アスガー・ファルハディで2010年日本公開の「彼女が消えた浜辺」(こちらベルリン国際映画祭で監督賞受賞)、2011年公開の「別離」(こちらベルリン国際映画祭グランプリ金熊賞、女優賞・男優賞ダブル
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受賞、アカデミー賞外国語映画賞)と立て続けに秀作を発表しました。
2014年日本公開の最新作「ある過去の行方」(The Past)は、ファルハディ監督にとって初めてイラン国外で撮る
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フランス映画となりました。
この「ある過去の行方」が、表現した普遍的なテーマは、“映画”という媒体(道具)でしか表現できない典型的なa0212807_1161981.jpg芸術作品です。
パリ郊外の下町を舞台に離婚手続きのため4年ぶりにパリに戻ったイラン人のアーマド(アリ・モサファ 1966~ 感情を抑えた静かな演技が好感)と薬局に勤める別居中の妻マリー=アンヌ(ベレニス・ベジョ 1976~ 2012年「アーティスト」主演)をタテ軸にして映画は展開します。
マリー=アンヌには、アーマドと再婚する前の夫との間に二人の娘がいます。
a0212807_117688.jpg彼女は、再々婚(三度目の結婚)を考えている恋人サミール(タハール・ラヒム1981~ 2009年「預言者」主演)の子供(息子)の面倒も見ていました。
思春期の長女リュシー(ポリーヌ・ビュルレ 1996~)は、母親のマリー=アンヌの結婚相手サミールを嫌っており母と娘の関係がギクシャクしていました。
a0212807_1185141.jpg翌日裁判所で離婚手続きするとはいえ4年ぶりにアーマドが、家族のもとに戻って来たことで、それぞれ心の底にあったわだかまり(トラウマ)を抑えきれなくなりました。
ファルハディ監督は、このあたりの演出が、すばらしく上手くて、登場人物の表情(とくに目)に顕われる感情のちょっとした動きや感情のニュアンスをカメラの長回しで捉えています。
a0212807_1120164.jpg昔、アーマドと一緒に暮らしていた長女のリュシーは、彼を慕い母マリー=アンヌの恋人サミールに自殺未遂で植物人間になった妻がおり、彼女の自殺未遂の責任は、母にもあると告げました。
彼女は、なぜ自殺未遂を起こしたのか‥映画は、次第にサスペンス色を帯びていきます。
黒澤明監督の「羅生門」(こちら)のように、サミールの妻の自殺未遂の原因が、語る立場により理由となる事実a0212807_11205632.jpgが、二転三転していきます。
大人も子供もそれぞれ‘人生の選択’を迫られる家族の葛藤や心の底にある複雑な感情(エゴイズム)をファルハディ監督の脚本のすばらしさもさることながら、洗練された演出で鮮やかに表現しています。
映画のキャスティングもすばらしく、出演している俳優全員が、それぞれファルハディ監督の演出に応え実在感(リアリティ)のある演技を披露し秀逸です。        (下写真:撮影の打ち合わせをしているアスガー・ファルハディ監督)
a0212807_112123100.jpg次女レア(ジャン・ジェスタン)、サミールの息子フォアド(エリス・アギス)、数カット(ちょっとの出演)ながらイタリアの女優ヴァレリア・カヴァッリ(1959~)も魅力的でした。
傑作映画ですので興味ある方は、「ある過去の行方」の公式サイト(こちら)をご覧ください。
by blues_rock | 2014-05-10 00:02 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)