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心の時空

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嘆きのピエタ  シネマの世界<第335話>

韓国映画「嘆きのピエタ」の原題は「Pieta」でミケランジェロ彫刻の傑作「ピエタ像」(こちら)をモティーフに聖母マリアの慈悲に溢れる愛に触発され鬼才キム・ギドク監督は「嘆きのピエタ」(2013年日本公開)を撮っています。
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ギドク監督は、脚本・製作も自ら担当、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞(グランプリ)を受賞しました。
ギドク監督は、「ピエタ像」のキリストを抱く聖母マリアに母の慈愛の象徴として見立て映画に登場する母親に重ね合わせ、過酷な韓国社会の現実をリアルに描いています。
a0212807_1924899.jpg映画では、局部的な表現ながら強烈なバイオレンスによる残酷なシーンが多く「嘆きのピエタ」の主人公である背徳的な親子(母と息子)関係で聖母マリアと子イエス・キリストに繋がるものは何もありません。
映画のプロットは、韓国の深刻な社会問題である貧困層を取り巻くヤミ金融地獄の過酷な実態をテーマにしています。
a0212807_19243747.jpg韓国は、ヤミ金融業者への法規制が甘いため、超高金利(映画では元金の10倍が貸付金利)の被害に遭っている市民が急増、とくに銀行が融資しない零細企業の被害は深刻です。
映画の主人公ガンド(イ・ジョンジン1978~)は、ヤミ消費者金融の取立て屋で、その情け容赦のない強引な取り立ては、借金した人たちの間で死に神のように恐れられていました。
a0212807_19251593.jpg彼の債権取り立ては、問答無用で債務者に障害事故を無理強い、加入させていた障害保険金により借金返済に充てさせました。
ガンドの母親という女ミソン(チョ・ミンス 1965~)が、突然彼の前に現われます。
面食らう息子ガンドの前で母親のミソンは「30年前にお前を捨てた母親だ。済まなかった。許して欲しい。」と土下座して謝りました。
ガンドは、ミソンを追い払いますが、彼の部屋へ無理やり上がり込みました。
a0212807_19262320.jpgミソンを信用しないガンドは、彼女をレイプ(未遂かな)しますが、彼から離れようとしませんでした。
ガンドの債権(貸付)取り立てにストーカーのように付きまとう母ミソン、息子のために食事を作りせっせと編み物をする母親‥眠っているガンドの無意識の自慰行為を手伝うという、この二人の摩訶不思議な関係が、現代の寓話(ダークなおとぎ話)のように展開していきます。
監督・脚本・製作と1人3役のギドク監督は、映画の撮影を11日間で終えました。
a0212807_19265682.jpgそのためか演出の荒さがしをすれば少し気になるところはありますが、最後まで一気に見せるギドク監督の迫力ある演出に押され衝撃的なラストシーンまで見入ってしまいました。
ガンドの空虚な精神と孤独は、次第にミソンの母性愛を受け入れ始め、愛を渇望するようになりました。
怨念の聖母マリア、ミソンを演じたチョ・ミンスの悲痛と憐憫の交錯した表情に感服、女優チョ・ミンスをずっと見ていました。
by blues_rock | 2014-05-09 00:10 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)