SHAME - シェイム シネマの世界<第318話>
マックイーン監督の「SHAME - シェイム」は、ヴェネツィア国際映画祭において国際映画批評家連盟作品賞を受賞、映画批評家のウルサ方が「これは映画製作と演技のすばらしい一致だ。」と絶賛しました。
主演したイギリスの俳優マイケル・ファスベンダー(1977~)は、男優賞を受賞しています。
映画のプロットは、‘セックス依存症’を抱えた男の荒涼たる心象風景‥自傷行為のような性行為に浸る男の心の闇‥「SHAME - シェイム(恥)」とは?
映像アーティスト、スティーヴ・マックイーン監督は、‘カメラの長回し(途切れないカット)’で男の性行為を撮り、映画を見ている者は、到底快楽とは思えないセックスを続ける主人公(マイケル・ファスベンダー)に戸惑い、一緒に落ち込み憔悴して行きます。
‘セックス依存症’を描くのですから当然「過激な性描写」も多く、日本公開ではアホウな映倫から成人映画(R-18)に指定され、ボカシ(私見ながら
撮影は、映像にこだわるマックイーン監督の信頼厚いイギリスの撮影監督ショーン・ボビット(1958~)で「SHAME - シェイム」では、ヒンヤリした青のトーンが、セックスに依存するしかない男の癒やしがたい空虚な心象風景を上手く表現しています。
妹を演じたイギリスの女優キャリー・マリガン(1985~)もすばらしく、男性依存症というより男を求めセックスした相手に愛を強いて思うとおりにならないとリストカットを繰り返す女性を名演しています。
映画のストーリーは、ニューヨークが舞台、ビジネスマンのブランドン(マイケル・ファスベンダー)は、プライベートな時間すべてをセックスに費やすセックス中毒状態でした。
ブランドンが、自分の部屋に入れるのは、行きずりの売春婦かセックスフレンドだけ、部屋にいる一人いる時は、いつもパソコンでポルノ・サイトを見ています。
会社の専用パソコンは、ポルノ映像の取り込み過ぎでパンクし上司から取りあげられました。
ブランドンは、内面にストレスを抱えると抑制が効かなくなり、会社のトイレであろうとシャワー中であろうとマスターベーションしないと治まらず、まるでジャンキーがヘロインを注射するような行為でした。
妹シシー(キャリー・マリガン)の電話も拒否していましたが、ついに押し掛けられ同居するようになりました。
リストカットの傷痕を無数にもつ恋愛依存症の妹シシーとセックス依存症ながら恋人とセックスできない兄ブランドンは、激しくぶつかるようになりました。
映画では、兄妹の過去について何も語られませんが、親からの虐待(子供の頃の性的虐待)あるいは兄妹の近親相姦のようなもの‥を想像させるワン・シーンに兄ブランドンの思い出したくない「SHAM - シェイム(恥)」が、隠されているように思いました。