ダンサー・イン・ザ・ダーク(前編) シネマの世界<第282話>
セルマを演じたビョークは、映画出演2作目にして2000年カンヌ国際映画祭最優秀女優賞を受賞しました。
トリアー監督は、当然‘ドクマ95’の理念に従い‘ハンディカメラ’で撮影、編集に‘ジャンプカット’を多く取り入れ、見る者を次第に鬱々とやり切れない気持ちにさせながらも‘セルマの不幸’を見届けようとする心理が湧くのは、トリアー監督のクールな演出の術中にハマった証拠です。
アメリカの田舎町でチェコ移民のシングルマザー、セルマは、息子ジーンと二人貧しくも慎ましく暮らしていました。
工場では、善良な友人(同僚)たちに囲まれ、仕事の後、地域のミュージカル・サークルに参加し楽しい毎日を過ごしていました。
しかし、セルマは、先天性の目の病気をもち次第に視力が衰え失明するという過酷な運命を抱えていました。
目の病気は、息子ジーンに遺伝、13才までに手術をしなければ、彼もまた失明する宿命を背負っていました。
そのためセルマは、生活を切り詰め、必死でジーンの手術費用をクッキー缶に蓄えていました。
昼は工場、夜は内職と働き続けるセルマの疲労は、彼女の視力をさらに悪化させ、同僚たちの助言や手伝いも
息子ジーンの手術費用まであと少しという時、その大切なお金を信頼していた警察官で隣人のビルから盗まれてしました。
ビルは、セルマの善き友人でしたが、浪費家の妻リンダのわがままな買い物を拒否できず、セルマの大切な蓄えを盗んだのでした。
その前夜、ビルは、セルマに借金を要請、お金の必要な理由(リンダの浪費に悩んでいること)をダレにも言わないで欲しいとセルマに相談していましたので、セルマには、ビルが犯人であるとすぐに分かりました。(後編に続く)