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心の時空

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ベルサイユの子  シネマの世界<第275話>

a0212807_2104355.jpgピエール・ショレール監督(1961- フランス)の新作「大臣と影の男」(2013 こちら)を見てテンポ良い演出に好感を持ちました。
「ベルサイユの子」(Versailles)は、ピエール・ショレール監督・脚本による2008年作品で長編第1作目の映画です。
映画のプロットは、現代フランスの抱える深刻な社会的病巣‥失業・路上生活(ホームレス)・薬物依存・不法移民・シングルマザー・社会復帰などジビアな社会環境の中で生きなければならない母子‥シングルマザーと幼い息子の母子と家族から逃げ社会からドロップ・アウトしたホームレスの男との切ない愛の物語です。
暗く悲しい弱者救済キャンペーンのような‘お涙頂戴物語’のベタなテーマを長編映画第1作監督作品とは思えないショレール監督のクールな演出には脱帽、映画は、完成度が高く見事と言うほかありません。
ストーリーは、パリで路上生活を送る薬物依存症のシングルマザー、ニーナと5才の息子エンゾが、パトロールa0212807_2155866.jpgの福祉施設関係者に保護され、若い母親ニーナは、施設で幼い息子エンゾと引き裂かれそうになり逃亡、ベルサイユ宮殿の裏に広がる‘ベルサイユの森’へ逃げ込みました。
深い森の中で社会からドロップ・アウトし虚無的に暮らす一人のホームレスの男ダミアンと出遭いますが、彼と一夜を共にしたニーナは、幼いエンゾを残し黙って‘ベルサイユの森’を立ち去りました。
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ダミアンのベルサイユの森での虚無的なホームレス暮らしは、自分の信念から選んだ生活でしたが、幼いエンゾの面倒を見ているうちに、エンゾへ愛情を抱くようになり、エンゾもダミアンに甘え慕うようになりました。
a0212807_2204362.jpgベルサイユの森の中で、寒さと飢えをしのぎながら一緒にホームレス生活するうち、ダミアンとエンゾ二人の間に親子の情のような絆が、生まれました。
ダミアンは、エンゾのために自分が捨てた社会と家族(憎悪している父親の元)へ還ることを決意します。
学校を嫌がるエンゾの手を引いて学校へ行き、馴染めない社会で働きながらエンゾの面倒を見るダミアン、しかa0212807_2211238.jpgしそれもつかの間、ダミアンは、エンゾを父親と彼の新しい妻に預け、一人ベルサイユの森へ還って行きました。
それから7年経ったある日のこと、12才になったエンゾの元に5才の時別れた(エンゾを捨てた)母親ニーナから‘あなたに会いたい’と別れた理由、謝罪の内容、介護施設で働いている現在のことを書いた手紙が届きました。
a0212807_2213962.jpgショレール監督は、映画「ベルサイユの子」をセンチメンタルなヒューマン・ドラマにせず、ホームレス生活のドキュメンタリー映像を見るようなリアルな映像で撮っています。
社会に順応できない世捨て人の虚無的なダミアン役のギョーム・ドパルデュー(1971-2008病没、享年37才)が、‘ダミアンそのまま’に、すばらしい演技を見せています。
a0212807_232471.jpgギョーム・ドパルデューは、フランスの名優ジェラール・ドゥパルデュー(こちら参照)を父に持ち姉は、女優ジュリー・ドパルデュー(こちら参照)と俳優としての才能を惜しまれながら生前の父ジェラール・ドゥパルデューとの確執、バイク事故による片足切断、院内感染病での闘病など‘人生の痛み’を知るギョーム・ドパルデューの真に迫る演技は、彼を象徴する最期の映画となりました。
5才のエンゾを演じたマックス・ベセット・ドゥ・マルグレーヴ(当時7才)の美しく清んだ目も印象的な映画でした。
by blues_rock | 2014-01-08 01:00 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)