鑑定士と顔のない依頼人 シネマの世界<第275話>
これまでフィルムで映画を撮ってきたトルナトーレ監督が、初めてデジタル撮影した映像も見どころです。
名優ジェフリー・ラッシュ(1951- 2010年映画「英国王のスピーチ」)が、主演さらに重要な役どころでアメリカの性格俳優ドナルド・サザーランド(1935-)、同じくアメリカの中堅俳優ジム・スタージェス(1978- 2007年映画「アクロス・ザ・ユニバース」)、オランダの女優シルヴィア・フークス(1983-)が、共演しています。
古美術鑑定スペシャリストにして一流オークショニア(古美術セリ人)のヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)は、社交嫌いにして潔癖症さらに女性恐怖癖もあり、彼の至福の時間は、自宅豪邸の隠しギャラリーの壁に掛けた数多くの‘女性の肖像画コレクション’の前で過ごす時でした。
「贋作者は、必ず自分の印(サイン)を残す」と名セリフを吐きながら次から次へテキパキと‘贋作!‘本物!’と鑑定していく主人公ヴァージル・オールドマンが、超一流の鑑定士にして人間ぎらいの偏屈者であることを見る者に感情移入させていくトルナトーレ監督の演出術は、さすが名監督と感心しました。
また登場シーンは、少ないけれど影の主役と言っていい重要な役どころを演じるのが、主人公ヴァージル・オー
腕利きの骨董修復人ロバート役にジム・スタージェス、ヴァージルに親の遺産である邸宅の美術品・家具調度品鑑定を依頼するクレア役をシルヴィア・フークス、この二人が、画家のビリーとどう繋がっていくのか、映画の場面(カット)を注意して見ていないと分からないと思います。
映画の中に、15世紀フランドルの画家ペトルス・クリストゥスの肖像画(上の絵)が登場、この絵も‘伏線’の道具として使われており、映画「鑑定士と顔のない依頼人」は、見るたびに新しい‘伏線’を発見するもしれません。
今年も、よろしくお願いいたします。
ジェフリー・ラッシュは好きな俳優なので、彼の悲しい結末には感情移入してしまいました。
ドナルド・サザーランドは若いころの映画をほとんど観たことがないのですが、やはり目や鼻が息子のキーファー・サザーランドに似てるなあと思いました。
この映画、伏線を見落としたところがたくさんあるので、レンタルDVDのリリースが待ち遠しいです。
ヴァージル・オールドマンのように‘好きなものだけ’に囲まれた部屋で過ごせる時間は、どんなにか至福でしょうね。
この映画は、何度見ても面白いだろうと思います。