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心の時空

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クリムト  シネマの世界<第267話>

a0212807_053645.jpg今夜のシネマの世界は、「ミステリーズ 運命のリスボン」(こちら)のラウル・ルイス監督が、脚本を書き2006年に監督した作品「クリムト」(オーストリア・フランス・ドイツ・イギリス合作)を紹介します。
名匠ラウル・ルイス監督が、「ミステリーズ 運命のリスボン」で見せてくれた映像への徹底した時代考証へのこだわりは、「クリムト」の時すでに見られ、古都ウィーンの路地裏の石畳、当時ヨーロッパを席巻したジャポニスム美術品が溢れる貴族屋敷の室内、絢爛豪華な貴族衣装、映画に映る大道具や小道具などのディテールに至るまでルイス監督は、細心の注意を払い撮影しています。
19世紀末から20世紀初頭にかけてハプスブルグ家ハンガリー=オーストリア帝国の首都ウィーンで活躍した天才画家グスタフ・クリムト(1862-1918没 享年56才)の目を通したヨーロッパの世紀末が描かれています。
a0212807_0555715.jpgルイス監督は、当時の帝政ヨーロッパ貴族社会が、醸し出す退廃的な閉塞感、ヨーロッパを席巻したジャポニスム美術の影響による精神の解放感、市民階級の登場を予感させる新世紀への躍動感をリアリズムに徹しながら表現、‘さすが名監督’と拍手したくなるような芸術a0212807_13326.jpg的な演出センスを随所で見せます。
ルイス監督が、クリムトの絵画からインスピレーションを得て映像にしたと推察されるシーン‥映画に何度も登場するカガミが、割れて万華鏡を見るようなカット割りは、病院の集中治療室で死を前にクリムトの虚構(幻覚)と現実が入り交じるシュールな潜在意識(パラノイア発症)を象徴的に表現しています。
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映画の大切な要素に“水の音”が、音響として通奏低音で流れ、クリムトの意識の幻覚と現実の映像効果に貢a0212807_18381.jpg献しています。
映画は、1918年脳卒中で倒れたクリムト(ジョン・マルコヴィッチ 1953-)を病院に見舞うのは、28才年下の友人にして愛弟子のエゴン・シーレ(1890-1918没 享年28才) ただ一人でした。
エゴン・シーレを演じたニコライ・キンスキー(詳細不明ながらナターシャ・キンスキーの弟とか)が、ルイス監督の演出による指導もあるのでしょうが、エゴン・シーレの肖像画(下の絵)から抜け出したようで驚きました。
クリムトは、死の床でパラノイアの発作に苦しみ、朦朧(もうろう)と混濁した意識の中でウィーンでの栄光と挫折の人生が蘇りました。
クリムト(左写真)は、生涯独身でしたが、クリムトの子供は、20人とも30人とも言われるくらいモデルや売春宿の女たちと自由奔放な性的関係を持ってa0212807_19210.jpgおり、馴染みの売春宿の女将が、クリムトに若い娼婦を「グスタフ、あなたの娘よ」と紹介しても‘ほお、そうかい’というような顔をするだけでした。
「触らなければ絵は描けない」とクリムトのアトリエには、いつも数人から十数人の全裸女性が、暮らしていたそうです
クリムトの絵画は、「エロス(生=性愛)とタナトス(死=自壊)」を表現した象徴として美術史に位置付けられていますが、確かに退廃的で破滅的な人生でした。
映画の中でクリムトは、他人には見えない自分の幻影(大使館の書記官)に導かれるように自分の“ファム・ファタル”となる魅惑的な女性レア(サフロン・バロウズ 1972-)に遭い心を奪われてしまいました。
ルイス監督の演出は、クリムトが、当時感じたであろう世紀末ウィーンの刹那的な雰囲気を表現するためシュールなイメージのカットをたくさん撮影し、そのカット割をシークエンス(シーンの連続)にする編集
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方法で、晩年梅毒に苦しんだクリムトの支離滅裂なパラノイア幻覚を映像にしました。
by blues_rock | 2013-12-25 00:05 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)