ブログトップ | ログイン

心の時空

yansue.exblog.jp

a day in my life

「切腹」と「一命」  シネマの世界<第245話>

a0212807_22535489.jpg社会派映画の名匠小林正樹監督(1919~1996没)が、1962年に初めて撮った時代劇作品「切腹」は、カンヌ国際映画祭でグランプリ(審査員特別賞)を受賞しました。
小林正樹監督といえば、6部構成で上映時間なんと9時間31分の映画「人間の條件」(1959~1961)が有名です。
この映画の主人公‘梶’役の仲代達矢(1932~)は、当時20代後半ながら戦争に翻弄され疲弊した一人の日本兵の姿をリアルに演じ絶賛されました。
「切腹」(1962)の主人公津雲半四郎(つくもはんしろう)を仲代達矢が、落ちぶれながらも武士の矜持を失わないサムライとして、すばらしい演技を披露しています。
津雲半四郎の娘に岩下志麻(1941~)、その夫千々岩求女(ちぢいわもとめ)を石濱朗(1935~)、千々岩求女が、病気の妻子を救うため狂言切腹の場所を求めた井伊家家老を三國連太郎(1923~2013)が、好演しています。
a0212807_22551864.jpg
この小林正樹監督作品「切腹」を三池崇史監督(1960~「十三人の刺客」 こちら)が、「一命」というタイトルでリメイク、「一命」では、津雲半四郎を市川海老蔵(1977~)、娘美穂を満島ひかり(1985~、2010年映画「川の底かa0212807_234922.jpgらこんにちは」で主演)、千々岩求女を瑛太(1982~)、井伊藩家老を役所広司(1956~)がそれぞれ好演しています。
国盗り戦国の乱世も終わり、徳川の治世となり西軍豊臣方に付いた武士たちは落ちぶれ、江戸市中に溢れていました。
仕官先を失い落ちぶれた武士は、その日の飯種にも欠く有様で、喰い逸(はぐ)れた武士の間に大名屋敷の門前で切腹を願い出て金品をせしめる狂言切腹が、流行っていました。
津雲半四郎の娘婿千々岩求女は、重病の妻美穂と赤子を抱え医者にかかる費用を工面できず耳にした狂言切腹を思いつき井伊家屋敷に出向きました。
「切腹するので玄関先を拝借したい」と申し出た千々石求女の求めに井伊家家老は、狂言切腹で脅し金品をたかる輩(やから)が多いことから千々石求女を切腹させることにしました。
貧乏困窮していた千々石求女の刀の刃が、竹ミツと知りながら井伊家の家臣たちは、千々石求女に竹ミツの刀での切腹を強いました。
a0212807_2383059.jpgすべてを失った津雲半四郎は、井伊家屋敷に行き千々石求女の縁者と名乗らず「切腹するので玄関先を拝借したい」と申し出ました。
そうと知らず津雲半四郎を狂言切腹で金品をたかる不埒な浪人と思った井伊家家老は、千々石求女の竹ミツによる無残な切腹の一部始終を語り、思い止まり立ち去るよう説得しますが、津雲半四郎は、不敵な笑いを浮かべるだけでした。
a0212807_2385613.jpg
武家社会の建前と本音(虚飾と保身)、形骸化した武士道へのアンチ・テーゼを表現した「切腹」と「一命」、同じプロットで49年の歳月を経て撮影された映画を見比べてみると‘監督の演出’と‘俳優の演技’の個性が、はっきりと分かり「映画の醍醐味」を味わえます。
by blues_rock | 2013-11-13 00:33 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)