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心の時空

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凶 悪  シネマの世界<第234話>

若松孝二監督他ベテラン監督のもとで助監督のキャリアを積み、長編映画デビューした白石和彌監督(1974~)の初メガホン映画「凶悪」が、福岡市中州の大洋映画劇場で公開中なので早速見て来ました。
現在公開中の映画「そして父になる」(こちら)では、善良でやさしく大らかな父親を演じたリリー・フランキーが、新作「凶悪」では、凶悪な保険金詐欺の殺人犯という真逆の役柄なので大いに期待して見に行きました。
「そして父になる」のリリー・フランキーは、子供好きで真面目な中年男の父親役を実在感溢れる見事な演技で‘下町のおじさん’のそのものに成り切り演じていました。
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「凶悪」で穏やかな人当たの良い、親切な不動産ブローカーの木村を演じるリリー・フランキー(1963~)の空気感そのものは、善良ながら、その内面たるや凶悪どころか極悪非道そのもので微笑みながら人を次々に殺していきます。
高額死亡保険に加入させられ命を狙われるのは、土地を持つ独り暮らしの年寄りや借金を抱え家族に倦まれた老人たちで、まず言葉巧みに近付きやさしい態度で安心させ身寄りのない孤独な老人に付け込んでいく笑顔の木村(リリー・フランキー)と高額の生命保険金に加入させた被害者に残忍な暴力をふるい次々に強殺していく元暴力団組長須藤(ピエール瀧が怪演!)の極悪非道な凶悪ぶりに亞然としました。
老人を容赦なく殺す元暴力団組長の須藤を演じるピエール瀧(1967~)の強面(こわもて)の凄味(すごみ)は、
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シャバの暴力団も恐れをなすのではないかと思えるほどのど迫力です。
老人介護ホームの職員に身寄りのない独居老人を斡旋するよう共謀させ、その老人に保険をかけ生埋めにして殺したり、証拠隠滅するためバラバラに解体した死体を澄ました顔で遺棄(ゴミ焼却炉で焼く)する木村・首藤の凶悪コンビは、平然と保険金詐欺殺人を重ねていました。
映画は、山田孝之(1983~)演じるスクープ月刊誌記者藤井が、東京拘置所獄中にいる死刑未決囚の須藤に会いに行くところから始まります。
須藤は、一審・二審で死刑判決を受けながらも死刑を不服として最高裁判所に上告していました。
須藤は、東京拘置所の面会で藤井に、死刑判決を受けた殺人事件の他にも警察の知らない保険金詐欺殺人
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が3件あること、その首謀者は、自分が‘先生’と呼ぶ木村であること、自分だけ死刑になるのは納得できない、刑務所の外で今もぬくぬくと暮らしている木村を死刑にしたいと藤井に訴えました。
突拍子もない須藤の告発に当初懐疑的だった藤井も、半信半疑で真相究明の取材を続けるうちに須藤の告発した事件の信憑性を感じ始めました。
藤井は、この未解決の殺人事件3件を執拗に追跡しました。
映画のプロットは、保険金詐欺連続殺人事件の首謀者木村の逮捕と法廷判決に至るまでをミステリータッチで描いた人間の犯罪心理ドラマです。
白石監督は、映像の色調(トーン)を少し落とし、映画を藤井の取材ドキュメントのような見せ方にしてリアリズム
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溢れる映画にしました。
法廷に証人として出廷した死刑未決囚や殺人犯被告と藤井が、法廷内で直接会話することなど有り得ず、この法廷内のシーンだけ少し気になりました。
ともあれ実話を基に製作された映画なので主演した俳優3人の熱演(怪演)と相俟って最後まで緊張感漂い見応えのある映画でした。
今村昌平監督の「復讐するは我にあり」(こちら)、園子温監督の「冷たい熱帯魚」(こちら)に連なる系譜の犯罪心理劇映画史に残る映画になるでしょう。
by blues_rock | 2013-10-20 00:03 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)