ブログトップ | ログイン

心の時空

yansue.exblog.jp

a day in my life

そして父になる  シネマの世界<第231話>

是枝裕和監督の最新作「そして父になる」は、今年2013年のカンヌ国際映画祭でグランプリ(審査員賞)を受賞、カンヌでは、映画上映終了後、是枝監督ほか出演者・スタッフへ10分近いスタンディング・オベーションがあったとのこと‥今年のカンヌ国際映画祭審査委員長であった名匠スティーブン・スピルバーグ監督から即刻映画のリメイク権契約オッファーがあったそうなのでスピルバーグ監督も相当感動したのでしょう。
a0212807_2472090.jpg
映画のプロットは、‘新生児取り違え’がテーマながら映画のストーリーの展開に特別な盛り上がりもなく、また遣り切れなくなるような場面もありません。
映画が始まるとすぐに6年前に発生した‘新生児取り違え’の事実が発覚、それぞれの親子が共に暮らした6年間の‘家族の風景’が淡々と語られて行きます。
a0212807_2475580.jpg‘新生児取り違え’が分かった後の家族の変化(変わるもの、変わらないもの)を映像は静かに映し、‘新生児取り違え’が、なぜ起きたのか(病院のミスではなく女性看護師の故意によるもの)、その原因を非難するようなシーンはありません。
是枝監督は、監督・脚本のほか編集も自ら行ない、撮影カメラのアングル、カットやシーンの映像の細かいところまで気を配っています。
撮影は、今流行りのハンディ・カメラを使用せず、画面がブレないよう移動カメラで丁寧に撮りながらカットをシーンにし、さらにシークエンスにしていく映像の見せ方は、是枝監督の映画センスの良さに改めて感心しました。
見せ方と言えば、映画の進展に従い、取り違えられた二人の6才の男の子が生活している家庭環境つまり生活a0212807_254831.jpgレベルの格差を少しずつ映し出していく手法も見事です。
一方の父親は、高学歴の一流企業に勤めるエリート社員で家族3人、都心のホテルのような高級マンションに暮らし、もう一方の父親は、下町の小さな電気屋でオンボロな狭い家で暮らす6人家族、二つの家族が初めて会い、駐車場で別れ乗る車が高級外車と軽ワゴン車、子供が育った家庭環境やしつけの差などもさらりと‘飲み物のストロー’や‘箸の持ち方’で描きます。
新生児の時に取り違えられた他人の子供をわが子として暮らした6年間の親子の情を選択するのか、子供の気持ちを無視して血のつながる実の親子という病院側の薦める新しい家族になるのか‥親たちに決断が迫られa0212807_2571961.jpgました。
じわりじわりと‘新生児取り違え’という6年前の事実とこれから家族として生きていく新しい現実とが折り重なるように大人たちに‘子供への真実の愛とは何か?’という命題を突き付けます。
映像のトーンを少しダークにして全体クールな色調で撮った撮影監督の瀧本幹也()は、元々写真家ですが、今回是枝監督の頼みを受け初めて長編映画の撮影に挑戦し是枝監督と息の合うところを証明しました。
サウンド・トラックとして流れるグレン・グールド演奏のバッハ「ゴールドベルク変奏曲」のピアノ曲も高速道路を走る車窓の景色や東京郊外の田舎町を走る車窓の鉄塔送電線の風景の情感にピッタリでした。
a0212807_2575871.jpg映画に出演した福山雅治、リリー・フランキー、尾野真千子、真木よう子、樹木希林、國村隼、 夏八木勲、 風吹ジュン、中村ゆりなど大人の俳優、二人の取り違えられた子供役の二宮慶多、黄升げんなど他の子役たち出演者すべてが‘すばらしい’演技でした。
中でも下町で小さな電気屋を営む父親役のリリー・フランキーの存在感のある自然な演技には、脱帽です。
もう片方の父親役福山雅治も主演と言われることを嫌い「自ら作品の一部になることを望んだ」というだけあって高学歴の一流企業に勤めるエリート社員が次第に父親になっていく微妙な感情の変化を見事に演じていました。
私も映画館で是枝監督と「そして父になる」の出演者とスタッフにスタンディング・オベーションを贈りました。
(「そして父になる」の公式サイトは こちら
by blues_rock | 2013-10-14 02:40 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)