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心の時空

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瞳は静かに  シネマの世界<第226話>

アルゼンチン映画には、時おりドキッとする映画があります。
ダニエル・ブスタマンテ監督の「瞳は静かに」(2009年作品、2011年日本公開)も8才のアンドレス少年(コンラッド・バレンスエラ、出演時9才)の‘純粋で無垢な瞳’の変化を映画のプロットにした秀作です。(予告編 こちら
a0212807_23395079.jpg映画の舞台は、1977年軍事独裁政権下のアルゼンチン北東部の街サンタ・フェです。
アンドレス少年は、看護婦の母親ノラを交通事故で亡くし祖母のオルガ(ノルマ・アレアンドロ)に引き取られ暮らし始めました。
アンドレス少年の目には、事故で亡くなったやさしい母親も‘なにやら’秘密があり、別居し祖母オルガと生活を共にしている怒りっぽい父親ラウルも母親ノラの話をすると突然怒鳴り‘なにやら’隠している様子、いつも隣り近所を‘なにやら’伺い善人のふりをして暮らす祖母オルガは、自分の家族がとにかく面倒なことに巻き込まれないよう孫のアンドレス少年にも厳しく接します。
「瞳は静かに」の原題は、「アンドレスはシエスタ(昼寝)をしたくない」というタイトルで祖母オルガも父親ラウルも
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アンドレス少年に教えたくない(知られたくない)‘なにやら’不穏な事件が起きると自室に行きシエスタするよう命令します。
親ノラの遺品の中から反体制派のビラが見つかると「子どもにはわからない」と祖母オルガは、さらにアンドレスa0212807_2343731.jpg少年に対し支配的になります。
映画のシーンは、秋・冬・春・夏とアンドレス少年のまわりで起きる出来事を見せながら相変わらず子供らしく無邪気に遊ぶ反面、不穏な行動をする大人たちをじっと観察していたアンドレス少年は、アルゼンチンに自分の家族に、さらに母親ノラに何が起きていた‘なにやら’の正体に気づきました。
祖母オルガと父親ラウルは、軍事独裁政権が行なう反体制派への強硬で残虐な弾圧を見て見ぬふりするたa0212807_23484249.jpgめ‘なにやら’得体の知れないものを隠し、アンドレス少年に「不安も恐怖もない。問題は何も起きていない」と国家の不正義に目をつむる手段として「シエスタ」が比喩的に用いられています。
アンドレス少年は、次第に祖母オルガや父親ラウルへの不信と不満を募(つの)らせて“恐るべき子ども”に成長していきます。
映画の展開とともにアンドレス少年の変化の象徴として瞳(目の表情)が変化していきます。
a0212807_23492679.jpgブスタマンテ監督の求める‘純粋で無垢な瞳’の表現に応じシーンごとに変化させていくコンラッド・バレンスエラ少年の演技に非の打ちどころなく見事です。
支配的な祖母オルガを演じたノルマ・アレアンドロ(1936~)は、1985年カンヌ国際映画祭女優賞を受賞しただけあってアンドレス少年との絡みは見応え充分の名演技でした。
アルゼンチンの暗黒時代(軍事独裁政権)を描いた映画では「瞳の奥の秘密」(2009 こちら)もドキッとするアルa0212807_23534968.jpgゼンチン映画の秀作です。
子供の純真な目で大人の世界の不条理や理不尽な社会悪を冷徹に見つめるシリアスな映画に「やがて来たる者へ」( こちら)、「蝶の舌」(こちら)、「白いリボン」(こちら)があります。
いずれも傑作映画なので自信をもってお薦めいたします。

                                          (上写真:ダニエル・ブスタマンテ監督)
by blues_rock | 2013-10-06 23:55 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)