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心の時空

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a day in my life

愛、アムール  シネマの世界<第225話>

a0212807_022122.jpgオーストリアの鬼才ミヒャエル・ハネケ監督の2013年公開映画「愛、アムール」(原題:amour)は、前作「白いリボン」(こちら)と同じ透徹した視線で人間の本質をリアルに描いています。
ジャン=ルイ・トランティニャン(1930~82才)とエマニュエル・リヴァ(1927~84才)が、演じる老老介護のリアリティ溢れる演技に凄身を感じました。
一人娘のイザベル・ユペール(1953~)が、両親の‘老いと死に向かう終末期’を受け入れられず目に見えて衰弱していく老いた母親を見かね、自分の憐れむ感情だけで両親の望まない介護・看護を押し付けたり、わが身さえままならない老父が、寝たきりの老母を付きっきりで介護している現実(遠く離れて暮らす娘は老老介護の大変な苦労を知らない)に思い及ばず、自分の受け容れがたい現実に直面して取り乱し泣き悲しむだけで老いた父親を責めたり‥ハネケ監督は、‘老い、衰え、死’をテーマに人間のエゴイズムと愛の現実を容赦なく曝(さら)け出して行きます。
a0212807_03467.jpg長年連れ添った夫婦の日常的な生活‥毎日続けている食事・入浴・睡眠といった行為とその間に交わされる会話に、老いた妻の記憶が、突然変調し始め容態は、次第に悪化していき付きっきりの介護なしでは、生活できなくなりました。
ハネケ監督の演出は、容赦なく老老介護のディテールにこだわり徹底的に介助のリアリティを求めています。
a0212807_043530.jpg妻が老いて衰えていく姿を克明に描き、介護や在宅看護、終末期を迎えた医療の現状も事細かに描いています。
映画に音楽(サウンドトラック)はなく聞こえるのは、常に生活音だけ‥話し声・食事の音・食器を洗う水の音・雨の音・ドアの開く音・足音・窓から部屋に入ってきた鳩の足音などが聞こえるだけです。
半身不随で寝たきりの老いた妻をたった一人で‘看取る’覚悟をした夫ですが、次第に食事も排泄もままならなくa0212807_072461.jpgなり意思の伝達すらできなくなって衰弱していく老いた妻の細部の描き方が、大変リアルです。
映画のラストでハネケ監督は、人間の根源にある‘愛の行為’をクールに表現しました。
「愛、アムール」は、カンヌ国際映画祭パルムドール、セザール賞作品賞・脚本賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞、アカデミー外国語映画賞など多くの映画コンクールで受賞しました。
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とにかくジャン=ルイ・トランティニャンとエマニュエル・リヴァ二人の老優が、すばらしい存在感溢れる演技を披露、必見の価値ある映画です。
by blues_rock | 2013-10-04 23:58 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)