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心の時空

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魚影の群れ  シネマの世界<第221話>

職人気質の相米慎二監督(1948~2001没、享年53才)が、35才の時に撮った「魚影の群れ」(1983)は、相米監督の最高傑作で、日本ネオリアリズモ映画の傑作です。
a0212807_4475936.jpg30年前の作品ながら今でも新鮮で瑞々しく2時間15分の上映中に映画が緩むところは、まったくありません。
物語は、本州最北端下北半島の漁港大間でマグロ一筋の漁師小浜房次郎(緒方拳 1937~2008)と一人娘トキ子(夏目雅子 1957~1985)、恋人でマグロ漁師を目指す依田俊一(佐藤浩市 1960~)、夫と幼いトキ子をおいて男と逃げた房次郎の妻アヤ(十朱幸代 1942~)が、織りなす人間模様です。
映画の舞台は、大間漁港とマグロを追って津軽海峡の荒海を走る小さな漁船の上です。
出演時46才で実在感のある緒方拳(こちら)、26才の美しい夏目雅子、23才の初々しい佐藤浩市、41才の円熟した十朱幸代4人の名優たちが、相米監督のワンカット・ワンシーンの長回しに挑むように‘体当たり’の演技をしています。
映画の中で針にかかった200㌔近いマグロを引き寄せ、モリを打ち込もうとする房次郎とマグロとの長い死闘シーンが、数カットあります。
相米監督は、小さな漁船上で房次郎(緒方拳)が、大きなマグロと死闘する数シーンのすべてに本間沖で釣れa0212807_4484274.jpgた本物のマグロを使い、緒方拳を本当にマグロと格闘させ、カメラは、時に水中カメラも使い、そのシーンを長回しで執拗に撮り続けました。
撮影監督長沼六男(1945~)の迫力ある映像は、こうして生まれました。
房次郎とアヤが、再会し係留している漁船の中での官能的なラブシーン(十朱幸代の乳房を晒した体当たりの演技がすばらしい)、妊娠したトキ子と漁師に成りきれない俊一の苦悩の中でお互い激しく求め合うラブシーンは、相米監督の日活ロマンポルノ時代のキャリアが生かされ、長沼撮影監督のカメラとも息が合いリアルなラブシーンでした。
a0212807_4505299.jpg長沼撮影監督の映像は、美しく雨の中で偶然房次郎を見かけたアヤが逃げ、気づいた房次郎がアヤを追いかけるシーンをズームイン・ズームアウトしながら撮った長回しの映像や津軽海峡の荒海を撮った映像などとくに印象に残りました。
長沼撮影監督の撮った映画で私が印象に残るのは、2002年「たそがれ清兵衛」、2009年「沈まぬ太陽」、2010年「最後の忠臣蔵」です。
a0212807_4511685.jpg「魚影の群れ」に出演した2年後、夏目雅子は、白血病で28才の若さで亡くなりました。
相米監督は、夭折した夏目雅子の女優としての才能を高く評価していました。
そして相米監督は、次回作に予定された自分の出身地岩手県盛岡市(南部藩盛岡)を舞台にした「壬生義士伝」(滝田洋二郎監督に引き継がれ2003年に完成、滝田監督は「おくりびと」こちらも秀作)の撮影準備に入るため、病気入院中の病室に資料を持ち込み企画していたそうですが、病気(肺ガン)悪化のため、2001年53才の若さで亡くなa0212807_15184230.jpgりました。
私は、相米慎二監督(左写真)メガホンによる日本リアリズモの「壬生義士伝」(滝田洋二郎監督の「壬生義士伝」も良かった)を何としても見たかったと今でも惜しまれてなりません。
by blues_rock | 2013-09-23 00:44 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)