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心の時空

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善き人のためのソナタ  シネマの世界<第206話>

a0212807_1372389.jpg歴史の年月で言えば、今からわずか29年前‥この映画「善き人のためのソナタ」(2006)が製作される22年前の1984年、当時社会主義国家東ドイツの首都東ベルリンが、物語の舞台です。
映画は、今のドイツでは考えられない、とくに日本で暮らす私たちには、到底信じられない当時の東ドイツが行なっていた‥国家が、自由を求める国民を監視し、脅迫や拷問で密告させ(夫婦や家族でさえ密告させていた)弾圧していた当時の過酷な市民生活をリアルに描いています。
映画「善き人のためのソナタ」は、ドイツ映画の新鋭アン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督(1973~)が、33才の時ミュンヘン映像映画大学の卒業作品として脚本・監督した長編第1作目の映画と言いますからその才能に驚きます。
「善き人のためのソナタ」は、アカデミー賞外国語映画賞ほか多くの映画賞を受賞しています。
ドナースマルク監督の映画センスと演出力と併せて秀悦なのが、この映画の主人公秘密警察シュタージの大尉a0212807_1415599.jpgを演じたウルリッヒ・ミューエ( 1953~2007 病没54才)の無表情な淡々とした演技と目で表す抑制した感情表情が、とにかくすばらしい映画でした。
1989年にベルリンの壁が崩壊する5年前の東ベルリンでは、まだ国家保安省(秘密警察組織 シュタージ)が、文学や演劇・音楽など芸術の自由な表現を求める市民たちを国家治安を脅かす反体制活動家として次々に逮捕、残酷な拷問し自白させ、自白しない場合証拠を捏造(デッチあげ)して国家反逆罪の濡れ衣を着せ、強制収容所に送っていました。a0212807_1463818.jpg
映画は、秘密警察シュタージに所属し社会主義国家に理念をもち忠誠を誓う真面目で優秀な大尉が、映画の主人公です。
大尉は、もう一人の主人公である劇作家とその恋人の舞台女優が同棲するアパートに盗聴器を仕掛け劇作家と恋人、その回りにいる人間を昼夜監視し、反体制の証拠を掴むよう上層部から命じられました。
盗聴命令の理由は、国家保安省大臣が、舞台女優に横恋慕しており自分の浮気相手をさせるため、劇作家に反体制の疑いをかけ、その証拠を見つけよという理不尽なものでした。
大尉は、上官から命令されるまま劇作家たちの私生活を徹底的に盗聴、監視し始めました。a0212807_1503764.jpg
大尉は、ひとり屋根裏部屋に設置した盗聴室にこもって劇作家と恋人の日常生活を執念深く、二人のセックスの様子まで洗いざらい盗聴記録し上官に報告しました。
また劇作家の仲間たちが彼の部屋に集まり、演劇や文学など芸術について語り合う会話も盗聴し逐一チェックしながら国家反逆罪の証拠を捜しました。
盗聴を続けていたある夜のこと、劇作家の弾くピアノ曲‘善き人のためのソナタ’が、盗聴していた大尉にも聴こえ、そのピアノソナタに感動した大尉の目に涙が溢れました。
a0212807_1531675.jpg劇作家は、反体制運動の極秘活動をしていましたが、秘密警察シュタージの徹底した監視と盗聴さらに密告(脅迫された恋人の裏切り)されながら生き延びました。
ドイツ統一後、作家になった彼は、シュタージが残した膨大な自分の記録を調べ不思議な事実を発見しました。
映画のドイツ語原題は「他人の生活」、国家権力のおぞましい盗聴をテーマにしながら日本語タイトルは、なぜ「善き人のためのソナタ」なのか、映画を見終えると分かります。
暗く重苦しい夜が明け、清々しい朝の光を見たような映画のラストシーンには、感動しました。
by blues_rock | 2013-08-27 01:35 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)