ブログトップ | ログイン

心の時空

yansue.exblog.jp

a day in my life

ニーチェの馬  シネマの世界<第203話>

a0212807_1182498.jpg「ニーチェの馬」というタイトルのニーチェに惹かれて映画を見ました。
ハンガリー映画の異才タル・ベーラ監督(1955~)が、2011年に発表した「ニーチェの馬」(原題「トリノの馬」2012年日本公開)は、カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞しました。
そしてタル・ベーラ監督は、「ニーチェの馬」を自分の最後の映画にすると公表しました。
「ニーチェの馬」を見た私の感想は、‘映像作家タル・ベーラ’の映像芸術‥美しいモノクロ写真を連続して見たような感動でした。
19世紀末、東欧の荒涼とした寒村に暮らす老農夫(デルジ・ヤーノシュ)と寡黙な娘(ボーク・エリカ)二人が迎える世紀末最期の6日間の様子を「ニーチェの馬」は、モノクロ映像で静かに淡々と描きます。
映画に登場する主体は、極端に少なく、上映時間2時間34分のほぼ全部を老いた病気の父親と寡黙な娘そして一家の生活を支えてきた年老いた馬の映像が、1シーン1カットのロングテイク (長回し)で撮影されロングテイク
a0212807_1264415.png
シーンのどれも静止画像のようでほとんど変化がありません。
映画のシーンは、モノクロ映像で映し出された質素な家の室内と粗末な納屋(兼馬小屋)、そのまわりに広がる荒涼とした原野を呷(あお)る強風の景色です。
映画に会話は、ほとんどなく、室内を映すシーンは、チェロの単調な主旋律音が繰り返し流れています。
a0212807_1304877.jpg
娘が、毎朝水を汲みに家の外に出るシーン、父親と娘が、家の外で作業をするシーンには、強風の音しか聴こえません。
タル・ベーラ監督は、ニーチェが1889年1月3日イタリアのトリノの広場で、御者に激しくムチ打たれる馬を見て、馬に駆け寄り首を抱きしめながら泣き崩れ意識を失い、精神の崩壊を起こしたというエピソードを元に、ムチ打
a0212807_1322224.jpg
たれていた「トリノの馬」のその後を主題にして脚本を書き映画化しました。
映画は、右腕の不自由な老いた父親とその世話をする寡黙な娘の単調な日常の生活6日間を描いていますが、二人の単調な一日の生活にも、ほんの少し変化は起きていました。
ニーチェ(1844~1900)といえば、「神は死んだ」と明言したことでも有名な反キリスト教思想をもつ稀代の哲学
a0212807_134944.jpg
者です。
ニーチェ晩年の発狂(精神の崩壊)は、彼の思索し発表した哲学が、彼の思考と精神に失調を齎(もたら)したと推察されるものの、ニーチェの狂気と彼の哲学とは、まったく無関係であるとタル・ベーラ監督は、主張したいのかもしれません。
a0212807_1352258.jpg
哲学で前人未到の領域に足を踏み入れ、後世の哲学者・思想家・文学者に多くの影響を与えたニーチェでしたが、晩年は発狂しその大半を精神病院で過ごしました。
正直私は、冒頭から単調なシーンの連続で途中退屈し見るのを止めようと思いましたが、もう少しあともう少しとついに2時間34分最後まで見てしまいました。
a0212807_1355339.jpg
見始めると単調さに退屈しながらも少しずつ変化していくロングテイクシーンに魅入られ途中で止められなくなる不思議な映画です。
映画史に残る傑作映画になると私は思います。
by blues_rock | 2013-08-17 23:16 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)