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心の時空

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炎上  シネマの世界<第194話>

市川雷蔵(1931~1969)を一躍有名にしたのが、市川崑監督の1958年(昭和33年)映画「炎上」です。
市川崑監督(1915~2008)は、三島由紀夫が1950年(昭和25年)に発表した小説「金閣寺」を映画化しようと脚本の準備に取りかかるものの三島由紀夫原作に書かれた主人公溝口青年の内攻した劣等感と彼の美の象徴「金閣寺」への完成した心理描写に脚本を変更しました。
a0212807_23483150.jpg「金閣寺」を「驟閣寺」と名を変え、脚本家和田夏十(1920~1983 市川崑夫人)にオリジナル脚本「炎上」を依頼しました。
撮影の宮川 一夫は、陰影のある美しいモノクロ映像にしました。
市川雷蔵が、内攻し屈折した溝口を見事なリアリズムで名演しています。
溝口は、寺の住職の子に生まれ、吃音(ドモリ)による感情表現ができず屈折し、少年のころ見た母と親戚の男との性行為に世の不浄を感じ苦悩します。
溝口は、子どものころから自分を受け入れてくれる唯一人の人住職の父に「驟閣(金閣寺)より美しいものは、この世にない」と教えられそう信じていました。
高校生になりその父が亡くなると彼は「驟閣寺」に預けられました。
‥しかし溝口が、「驟閣寺」で見たものは、自分の信じる「絶対美の驟閣寺」とは程遠いものでした。
溝口は、足の悪い友人戸刈(仲代達矢 こちら)の無頼な悪行に屈折した精神を感じ親しくなり女たちの素情をa0212807_23491174.jpg教えられました。
溝口は、女を抱くことで自分に執着する観念を破壊しようと京都五番町の遊廓に行きますが、女を抱こうとしたとき「驟閣寺」の幻影を見て断念、五番町を後にしました。
その足で「驟閣寺」に向かい自分と共に「驟閣寺」を焼き尽くそうと火を付けました。
溝口役の市川雷蔵の表情には、市川雷蔵自身の背負う、何か人には言えない暗い翳のようなものが現われていて、溝口役の演技に存在感のある深みを与えています
市川雷蔵は、キネマ旬報主演男優賞を受賞、ヴェネツィア国際映画祭でも新人男優賞を受賞しています。
a0212807_2353754.jpg市川雷蔵は、「眠狂四郎」シリーズで虚無感を漂わせた時代劇のスターとなり「眠狂四郎」という剣豪で武士(サムライ)のダンディズムとニヒリズムによる様式美を作りあげ38才の若さで亡くなりました。
市川雷蔵の人柄も「誰に対しても驕ることなく高ぶらずに、常に礼儀正しかった」と伝えられています。
水上勉(1919~2004)は、同じ金閣寺放火事件を題材に「五番町夕霧楼」(1962)を発表、幼なじみの禅修行僧と若い娼婦の悲恋物語にしました。
by blues_rock | 2013-07-29 00:04 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)