山田洋次監督 シネマの世界<第184話>
主人公の姉を吉永小百合(1945~)、家族に迷惑ばかりかける弟を笑福亭 鶴瓶(1951~)が、好演しています。
映画のストーリーは、自立できないまま末期ガンに侵され弟が、気丈ながらもやさしい姉の腕の中で看取られながら亡くなるまでの‘姉弟(きょうだい)愛’の物語です。
姉が、衰弱した弟の最期に二人で鍋焼きうどんを食べるシーンや最期の夜に姉と弟がリボンでお互いの手首を結んで寝るシーンは、市川監督の「おとうと」にも登場するシーンで、映画の最後に「市川崑監督に捧げる」とクレジットされていました。
山田監督は、1961年の監督デビュー以来、1963年「下町の太陽」でいまや山田監督映画の常連女優となった倍賞千恵子(1941~)を一躍スターにし、1964年に始まる「馬鹿まるだしシリーズ」でハナ肇(1930~1993)の喜劇才能を育て、1969年に「男はつらいよ~フーテンの寅シリーズ」の第1話を発表、その後48作品に主演した渥美清(1928~1996)=車寅次郎を庶民の英雄にしました。
山田洋次監督の才能は、脚本・監督のほかキャスティング(配役)にも発揮され、役者の才能を見抜く名人(目利き)です。
山田監督の映画に抜擢された俳優(男優・女優ともに)は、山田監督から指導(演出というよりアドバイス)を受けているうちに、当人の気付かない自分の個性を自然に引き出され、やがて演技能力にまで高められ俳優として成長しています。
山田監督は、若いころ小津安二郎監督の映画に興味なかったそうで、ある日のこと、‘静’の小津監督作品に‘動’の黒澤監督が、じっと見入っているのを見て、小津安二郎監督を研究したそうです。
私の好きな山田監督作品は、「たそがれ清兵衛」(2002)で コメデイが、ワンパターンで安易なのが、残念です。
山田洋次監督の映画に欠かせないのが、音楽監督の冨田勲(1932~)です。