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心の時空

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J・エドガー  シネマの世界<第162話>

映画のタイトル「J・エドガー」とは、アメリカFBI創始者にして初代長官ジョン・エドガー・フーヴァー(1895~1972)のこと、タイトルから‘フーヴァー’を外し「 J・エドガー」にしたところに、クリント・イーストウッド監督(1930~)の狙いが、あるように思いました。
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イーストウッド監督に「J・エドガー」役を懇願したレオナルド・ディカプリオ(1974~)の熱演を以ってしても、この毀誉褒貶(評価の落差)の大きいフーヴァーの人物像‥たとえば、飽くなき権力欲と相当のマザコン、他人とくに女性や敵対する者に対する横暴と臆病(吃音コンプレックス)、同性愛者で女装趣味(クローゼット・ホモセクシャル)など屈折した性格表現に少し物足りなさを感じました。
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フィリップ・シーモア・ホフマン(1967~)の「J・エドガー」ほうが、私のイメージに応えてくれそうな気がします。
1993年映画「ギルバート・グレイプ」(主演ジョニー・デップ)で知的障害のある弟アーニーを演じたレオナルド・ディカプリオが、あまりにすばらしく、ついその時の演技と比べてしまいます。
イーストウッド監督が、「J・エドガー」の脚本をダスティン・ランス・ブラック(1974~ 「ミルク」の脚本家)にオッファa0212807_21365292.jpgーしたのは、さすが名監督です。
脚本を書いたダスティン・ランス・ブラックもまた同性愛者なので、イーストウッド監督は、J・エドガーの心の深淵を心理描写するうえで欠かせないと思ったのでしょう。
映画は、FBIの創始者で初代長官を半世紀にわたって続けたJ・エドガー・フーヴァーの特異な生涯を描いた興味深い人間ドラマです。
1924年にFBI長官に就任してから1972年に亡くなるまで、なんと48年間、8人の大統領に仕え、陰でアメリカ国家を実効支配した男の知られざる闇の部分を描いています。
a0212807_2147223.jpgフーヴァー長官は、1922年のソ連誕生によりアメリカ国内で広まった社会主義運動や過激な労働運動をテロ活動として弾圧、1932年の幼児誘拐事件、1960年代に活発となった黒人公民権運動など犯罪防止を理由に、捜査対象を広げ自らの価値観に相容れない対象者には、国家秩序を破壊する犯罪者として容赦ない捜査活動を行ないました。
議会にもFBIの権限を大幅に拡大する法律(犯罪捜査盗聴の承認)を認めさせました。
J・エドガーが、若いころ働いた国会図書館の膨大な蔵書をインデックス化、書籍検索の大幅な時間短縮を成し
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遂げた経験から、アメリカ市民の指紋など個人データを集約(プロファィリング)し、科学的な捜査と合理的な分析法を導入する一方で、大統領や有力政治家・財界人・有名人に対する諜報活動を行ない、その情報を自分の元に集め‘極秘ファイル’として保管、自分の権限(権力)を奪おうとする大統領には、表沙汰にできないスキャンダルを暴露すると脅迫し黙らせたり、自分を排除しようとする国会議員や有力者に対しては、容赦のない政治的a0212807_21553942.jpg迫害を加えました。
J・エドガーは、生涯独身でしたが、一度だけプロポーズし断られた女性を私設秘書(役をナオミ・ワッツ 1968~)としてFBI組織内の自分に関わるすべてを管理‥‘極秘ファイル’の管理も含め、一切彼女に任せました。
さらに彼は、新任捜査官のクライド・トルソン(アーミー・ハマー 1986~)を副長官に抜擢、彼と生涯にわたり友情以上の交際を深めていきました。
ケネディ大統領暗殺、弟のロバート・ケネディ司法長官暗殺、キング牧師暗殺などアメリカ社会の汚点とも言うべき歴史の暗部(暗殺された有力者たちとフーヴァーFBI長官との暗闘)を想像しながら、この映画を見るとさらに興味深く楽しめると思います。
(参考)上の白黒写真は、ジョン・エドガー・フーヴァーFBI長官(右)とクライド・トルソン副長官(左)のツーショット、二人の靴にご注目ください。
by blues_rock | 2013-05-09 00:20 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)