ブログトップ | ログイン

心の時空

yansue.exblog.jp

a day in my life

蝶の舌(後編)  シネマの世界<第158話>

グレゴリオ先生は、スペイン社会に憎悪と不信が充満し、街に沈鬱なムードが溢れる中、どの家庭の子供も差別せず物事の真理を教え「自由に飛び立ちなさい!」という言葉を残して1936年の夏に学校を引退しました。
1936年7月、スペインの特権階級(地主・教会・資本家)は、労働者階級(共産主義者)・自由主義者(共和派)たちの台頭を恐れ、軍部と結託してファシスト党を結成、クーデター(暴力による政権交代)を起しました。
a0212807_2243750.jpgスペインを二分する市民の深刻な政治的な対立(テロと紛争)に、ファシズムのナチスドイツと共産主義のソ連が加担したことで、スペイン内戦の悲劇は、市民がお互いに血で血を洗う悲惨な事態になりました。
そして、共和派のグレゴリオ先生も強制収容所に移送されるためファシスト党の民兵に拘束されました。
共和派であったモンチョ少年の父親は、家族の安全のために同志を裏切り、涙を流しながら連行される同志に向かい「アテオ(不信心者)!アカ(共産主義者)! 犯罪者!」と叫びました。
信心深い母親は、モンチョ少年が、喘息の発作を起こしたとき息子の命を救った恩人グレゴリオ先生に「この恩は一生忘れない」と言ったはずなのに「アテオ(不信心者)!アカ! 犯罪者!」と罵倒しました。
親の間で、豆鉄砲を食らった鳩のような表情で、両手を縛られ連行される恩師を茫然と見ていたモンチョ少年に母親は、「お前も言いなさい!」とグレゴリオ先生に罵声を浴びせるよう命じました。
a0212807_2253438.jpg移送トラックの上からグレゴリオ先生は、悲しい顔をしてモンチョ少年を見つめていました。
モンチョは、グレゴリオ先生たちを移送するトラックを追いかけながら思わず「ティロノリンコ!蝶の舌!」と、とっさに叫びました。
モンチョ少年の声が、先生に届いたかどうかは、分かりません。
両モンチョには、目の前で起きていることが何なのか理解できませんでした。
モンチョは、何も分からないままグレゴリオ先生に向かって「アテオ(不信心者)!アカ! 犯罪者!ティロノリンコ! 蝶の舌!」と罵声を浴びせました。
a0212807_226684.jpgモンチョ少年に突然突き付けられた厳しい社会の現実‥人間の愛とは何か?友情とは?貧富とは?自由とは?そして卑怯、自尊心、裏切りといったものに直面したモンチョと彼の恩師グレゴリオ先生との‘永遠の別れ’のクライマックスは、痛ましくつらく哀しいシーンでした。
by blues_rock | 2013-05-05 00:24 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)