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心の時空

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ローマ法王の休日  シネマの世界<第144話>

2012年イタリア映画の原題「法王が決まった(ラテン語:HABEMUS PAPAM)」が、なんで「ローマ法王の休日」になるのか、この映画の配給会社ギャガのセンスを疑います。
a0212807_19445552.jpgアメリカ映画の巨匠ウィリアム・ワイラー監督(1902~1981 アカデミー賞監督賞受賞3回の名監督)が、名女優オードリー・ヘプバーン(1929~1993)を主演に撮った1953年映画「ローマの休日」にあやかっての安っぽい発想なら日本の映画ファンを舐めていると言わざるをえません。
この映画は、前法王の死去に伴い世界中のカトリック枢機卿が、ヴァチカンのシスティーナ礼拝堂に集まり「コンクラーヴェ」(法王選挙)を行なうところから始まります。
法王選挙権をもつ枢機卿は117人、選挙で三分の二の支持を得た枢機卿が現われるまで「コンクラーヴェ」は、鍵を掛けられたシスティーナ礼拝堂で何日も続きます。
そして、三分の二の支持を得た枢機卿は、新ローマ法王に即位、終身法王として世界12億人のカトリック信者を
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導くことになります。  (備考:ヴァチカンを護衛するスイス衛兵の制服は、ミケランジェロのデザインです。)
ほとんどの枢機卿は、「神よ、どうか私が、選ばれませんように」と祈るのだとか、それくらいローマ法王の座a0212807_19473273.jpg(イエス・キリストの代理人だとか)は、孤独で不自由、ストレスの多い役目なのでしょう。
映画は、原題どおり「法王が決まった」ところから急展開していきます。
(予告編はこちら
誰も予想していなかった無名の枢機卿メルヴィル(ミシェル・ピッコリ 1925~)が、運命の悪戯(いたずら)で「コンクラーヴェ」により、新ローマ法王にa0212807_19494898.jpg決定しました。
その結果に一番驚いたのは、メルヴィル自身でした。
茫然自失、パニックに陥った彼は、サンピエトロ大聖堂前の広場で新法王のスピーチを待ちわびる大勢の信者たちに立ち竦(すく)み、自室に引きこもってしまいました。
a0212807_19501854.jpg思い余った枢機卿たちは、イタリア最高の精神科医(ナンニ・モレッティ監督自身が出演)をメルヴィルの治療に当たらせました。
ナンニ・モレッティ監督(1953~)は、この映画の原案・脚本・監督・製作を担い、そして出演(精神科医役)もするという八面六臂の活躍ぶりです。
a0212807_19504462.jpg枢機卿メルヴィルを演じるフランスの名優ミシェル・ピッコリ(1925~)が、自然体で人生の哀感と心の襞(ひだ)に触れるすばらしい存在感を出しています。
ヴァチカンから逃亡したメルヴィルは、ローマ市内を彷徨いながら市井の人たちと自由に交わることで自分の人生を見つめ直し、望まない新法王即位への苦悩をペーソス(哀感)とユーモアを交えシニカルに演じています。
a0212807_13515343.jpg映画のラスト・シーンで、ヴァチカンに戻ったメルヴィルが宣言する一言(決意)に、この映画のタイトルは「法王が決まった」でなくてはならない理由があり、モレッティ監督の意図するヴァチカン(ローマカトリック教会)を揶揄したシニカルでハートフルなコメディ映画としてのすばらしさが、見た人に伝わりません。
by blues_rock | 2013-03-26 00:02 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)