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心の時空

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a day in my life

16歳の合衆国  シネマの世界<第113話>

映画の冒頭と最後に、この映画のクライマックス場面が、二度登場します。
ハンデイ・カメラで撮影し、少し手ブレたような映像をコマ送りで編集、主人公16歳のリーランドが、独り言でつぶやく「あの日のことは、覚えていない、本当に思い出せない、肝心なことは、何も‥」で映画のストーリーは、始まりそして終わります。
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映画の原題は、「The United States Of Leland(リーランドの合衆国)」(2004)、このタイトルのほうが、この映画の主題となる愛のない人生の不毛と愛が育てる人生への希望になじみます。
名優ケビン・スペイシー(1959~)が、脚本にホレ込みリーランドの父親役で出演、製作も担当しています。
a0212807_185651.jpg主人公の16歳のリーランド(ライアン・ゴズリング)は、少年のころからナイーブで両親の不仲もあって孤独な心を抱えて成長しました。
成長しても感受性が強く、純粋なリーランドは、愛する人の悲しみも自分の悲しみとして感じてしまい、その苦悩と悲観の重圧で自分の心を押し潰していました。
彼は、人を愛することでその人の悲しみや孤独と自分とを同化させ、彼の悲しみと孤独は、次第に彼の心を疲労させ、彼の感情を喪失させていきました。
a0212807_1102866.jpgリーランドは、16歳にして‘自分の人生を諦めた’若者になっていました。
彼は、知的障害をもつライアン少年(ガールフレンドの弟)と仲が良く、一緒に遊び何かと面倒を見ていました。
ある日、彼は、その知的障害児であるライアンをナイフで刺し殺しました。
それが、映画の冒頭と最後のシーンで、リーランドのつぶやく「あの日のことは、覚えていない、本当に思い出せない、肝心なことは、何も‥」に繋がって行きます。
リーランドは、自分もライアンの痛みを感じるため、同じナイフで自分の手の平を切りました。
a0212807_1125462.jpg彼は、すぐに逮捕され少年刑務所に収監され孤独の中で自分でも分からない殺人の動機を「The United States Of Leland(リーランドの合衆国)」と表紙に書いたノートに綴っていきました。
リーランドは、知的障害児であるライアンを刺し殺す前に、ライアン少年が、知的障害者の自分は誰からも一人前の人間として扱ってもらえず、それに苛立ち苦しんでいることに気付いていました。
‥彼は、気づいていた‥自分が普通の子ではなく、嘲笑か同情の対象でしかないことを‥彼は、逃げ場を失い苦しんでいる、とリーランドは、思いました。
a0212807_1135267.jpg彼は、苦しむライアンの心を楽にしてあげるためにナイフでとっさに刺し殺しました。
リーランドの「あの日のことは、覚えていない、本当に思い出せない、肝心なことは、何も‥」の証言は、ライアンの家族を苦悩させ悲痛な人生に陥れました。
そして、リーランドもまた政務所の中でライアンの家族と親しい青年の手で刺し殺されました。
映画のシーンは、リーランドとライアン少年との交流をフラシュバツクしながら展開していきます。
ある日、公園の倒れた木の前で自転車を倒し一人で何もできない自分に苛立ち苦しんでいるライアンを見たリーランドは、ライアンを強く抱きしめて耳元でささやきました。
a0212807_1175040.jpg「大丈夫だよ。何も心配ない。約束する。」‥ラスト・シーンです。
製作者ケビン・スペイシーに才能を見出された28才のマシュー・ライアン・ホーグ監督の映画センスが光ります。
主演のライアン・ゴズリング(1980~)は、「君に読む物語」(2004)でも主役の青年時代を好演していました。
この映画では、人生に希望を失い人生を諦めた青年の虚ろな目の表情に彼の演技力を感じました。
ライアン・ゴズリングは、名優ゲイリー・オールドマンを尊敬しているとのこと、若手演技派俳優として今後の作品を期待したいと思います。
by blues_rock | 2012-12-11 00:05 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)