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心の時空

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ヒトラー 最期の12日間  シネマの世界<第112話>

何と言ってもスイスの名優ブルーノ・ガンツ(1941~)演じる最晩年の孤独な独裁者アドルフ・ヒトラーは、本物と見紛(まご)うくらいの名演で、瞬(まばたき)きするのも惜しいくらいリのアリティがありました。
映画史上に残る‘名演技’として映画ファンに称賛され語り継がれていくことでしょう。
a0212807_16222351.jpg映画「ヒトラー最期の12日間」は、オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督(1957~)2004年作品で、ドイツ・イタリア・オーストリアによる共同制作です。
ブルーノ・ガンツは、残忍で冷酷極まりない悪魔の化身のようなナチスドイツの独裁者ヒトラー(1889~1945、56才自殺)の表と裏(虚勢と虚弱)をヒトラー本人ではないかと思わせるくらいリアリティ溢れる名演技で再現しています。
晩年のヒトラーは、一時ヨーロッパを支配し、ソ連のスターリングラードまで侵略したものの、その後戦況が一変し、ヒトラー総統率いるナチスドイツの形勢が、不利となると、ドイツ軍の統制も乱れ、前線部隊の士気も落ち敗退を続けました。
その頃(1942年)からヒトラーは、独裁者特有の支離滅裂な言動と凶暴さが顕著になり、指導者(フュラー)として国家の統制を無視した誇大妄想に囚われた行動が、多くなりました。
a0212807_16235426.jpg独裁者としての横暴な虚勢は、ヒトラーの孤独に拍車をかけ戦争のストレスから持病の胃腸病・心臓病(冠状動脈硬化症)・不眠症・ウツ病・パーキンソン病など心身疾患を抱え、これがさらにヒトラーの神経を蝕んで行きました。
国家指導者(フューラー)への絶対無条件服従と忠誠を強制するナチスドイツの全体主義(ファシズム)思想は、独裁者ヒトラーに盲従する側近ばかり(軍需相のシュペーア以外精神病質であったとの証言記録)となり、ヒトラー総統大本営に不都合な真実(不利な戦況や悪い情報)が届かなくなり、反対に虚偽の報告か些末な手柄話ばかりが、地下壕に氾濫しました。
ヒトラーは、若い時から人一倍健康には気を使い、酒・煙草を嫌い菜食主義者でしたが、それでも1943年頃からa0212807_16245414.jpgヒトラーの精神病症状と数多の持病疾患は、さらに悪化して行きました。
主治医は、ヒトラーの要求もあり病気治療のために多種多様な薬(77種)を投薬しました。
とくに不眠症とウツ病治療のために処方された覚醒剤・コカインの副作用は、ヒトラーの攻撃性を強め、時として異常に興奮するようになりました。
またパーキンソン病の症状も悪化しヒトラーの左手は、はっきり人目に分かるくらい震え、足を引きずり前かがみで歩くようになりました。
1944年になると心身衰弱したヒトラーは、次第に正気を失っていき、思い付きのような作戦で致命的な敗戦を続け、度々判断ミスを犯すようになりました。
a0212807_16261472.jpgついにナチスドイツは、連合国軍に包囲され、ベルリンがソ連軍の総攻撃を受けるとヒトラー軍事政権も風前の灯火(ともしび)となりました。
さて、映画の映像は、まるで1945年4月戦火に包まれたベルリンにドキュメンタリー取材班がタイムスリップし、独裁者ヒトラーに密着しながら数台の撮影カメラでナチスドイツ滅亡の瞬間を現場で独占取材しているような生々しさを再現しています。
取材現場は、ヒトラー総統官邸の地下壕(ナチスドイツの大本営‘狼の巣’)と廃墟化したベルリン市街です。
a0212807_16274041.jpg脚本は、ヒトラー自殺の最期まで秘書(口述筆記タイピスト)を務めたトラウドル・ユンゲ(1920 ~2002)の回顧録とドイツの歴史家ヨアヒム・フェスト(1926~2006)のノンフィクションを元にしています。
映画の終盤、ナチスドイツの滅亡(第三帝国の敗北)が、決定的となる中、破壊されたベルリン市街の瓦礫の下で、食料・水・火もなく、飢え寒さに震えながらソ連軍猛攻撃の恐怖に怯える300万人ベルリン市民の避難を進言した軍需相シュペーアに、ヒトラーが 「自分は、国民に苦難を強制したことはない。 国民が、自分を国家指導者(フューラー=独裁者)に選んだのだ。 ドイツ国民の破滅(死)など関心がない。 国民の自業自得だ。」 と吐き捨てるシーンこそa0212807_16295671.jpg
国家権力の本質を見た思いです。
映画「ヒトラー最期の12日間」は、2時間35分と長編ながら、重厚な歴史ドキュメンタリー映像を見ているようでブルーノ・ガンツのヒトラーが、映画の冒頭に秘書たちに会うため自室から登場するシーンと同時に映画に惹き込まれ、最後に秘書のトラウドル・ユンゲが、ソ連軍を逃れベルリンを脱出するシーンまで短く感じられます。
ヒトラー役のブルーノ・ガンツが、とにかくすばらしく何度見ても感心します。
by blues_rock | 2012-12-09 00:20 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)