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心の時空

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a day in my life

月に吠える  詩:萩原朔太郎

萩原朔太郎(1886~1942)は、十代から神経質かつ病弱な子供で学校に馴染めず、学校には行かず独りで森の中を歩きまわり、野原に寝転がって空を眺めているような少年でした。
a0212807_15495575.jpgその後も精神の苦悩で大学を転々(入学しすぐ退学)とし詩作と音楽(マンドリン・ギター)に熱中していました。
「詩と音楽の研究会」を自宅で主宰し神秘主義・象徴主義的な作詩をしていました。
今なら自分で作詩・作曲をする音楽好きの青年のようなタイプでしょう。
同年代の詩人北原白秋・室生犀星との交友で萩原朔太郎は、詩人として成長していきました。
32才の時に自費出版の詩集「月に吠える」を発表、文語調であった詩の概念を破る萩原朔太郎の詩集は、森鷗外により絶賛され一躍大正詩壇の寵児になりました。
1920年代になると萩原朔太郎は、ヨーロッパ的な神秘主義・象徴主義から次第に‘万葉’の古代日本趣味へ回帰していきましたが、紛れもなく日本近代詩を代表する詩人です。
     猫
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まつくろけの猫が二疋         なやましいよるの家根のうへで
ぴんとたてた尻尾のさきから     糸のやうなみかづきがかすんでゐる
「おわあ、こんばんは」         「おわあ、こんばんは」 
「おぎやあ、おぎやあ、おぎやあ」
「おわああ、ここの家の主人は病気です」
                                  ◇
     恋を恋する人
a0212807_162481.jpgわたしはくちびるにべにをぬつて
あたらしい白樺の幹に接吻した
よしんば私が美男であらうとも
わたしの胸にはごむまりのやうな乳房がない
わたしの皮膚からはきめのこまかい粉おしろいのにほひがしない
わたしはしなびきつた薄命男だ
ああ、なんといふいぢらしい男だ
けふのかぐはしい初夏の野原で
きらきらする木立の中で
手には空色の手ぶくろをすつぽりとはめてみた
腰にはこるせつとのやうなものをはめてみた
襟には襟おしろいのやうなものをぬりつけた
かうしてひつそりとしなをつくりながら
わたしは娘たちのするやうに
こころもちくびをかしげて
あたらしい白樺の幹に接吻した
くちびるにばらいろのべにをぬつて
まつしろの高い樹木にすがりついた
by blues_rock | 2012-11-18 00:56 | 詩/短歌/俳句/小説 | Comments(0)