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心の時空

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a day in my life

初恋  詩:島崎藤村

  初恋     島崎藤村a0212807_0204540.jpg

まだあげ初(そ)めし前髪の
林檎(りんご)のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛(はなぐし)の
花ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへ(え)しは
薄紅(うすくれなゐ)の秋の実に
人こひ(い)初めしはじめなり

わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情(なさけ)に酌(く)みしかな

林檎畑の樹(こ)の下に
おのづ(ず)からなる細道は
誰(た)が踏みそめしかたみぞと
問ひ(い)たまふ(う)こそこひ(い)しけれ
           ◇
こんな初(うぶ)な恋の詩を作った若い島崎藤村(1872 ~1943)でしたが、1912年40才の時に女学校を出たばかりの姪島崎こま子(1893~1978)と恋愛関係になり、こま子が妊娠出産するというスキャンダルを起しました。
a0212807_11581545.jpg島崎藤村は、この恋愛事件から逃れるようにパリに留学しました。
1916年パリ留学から帰国した藤村が、こま子と再会するとまた二人の関係は戻り(焼け木杭に火が点き)ました。
1919年島崎藤村は、姪こま子がモデルの小説「新生」を発表して、こま子と別れました。
島崎こま子は、当時のことを「二人して いとも静かに 燃え居れば 世のものみなは なべて眼を過ぐ」と自分の心情を歌に残しています。
彼女は、詩人で小説家の叔父島崎藤村を本当に愛していたんでしょうね。
晩年のこま子は、いつも和服で、言葉使いが美しく、静かな気品を湛えていたとか、「人間の幸せとは、美しいものを美しいといえる、うれしいことをうれしいといえることでしょうねぇ。」と語っていたそうです。
by blues_rock | 2012-11-15 00:27 | 詩/短歌/俳句/小説 | Comments(0)