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心の時空

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a day in my life

認知症に感性の衰えはない

私たちの高齢者介護事業所(デイサービス&小規模多機能介護ホーム)では、毎週金曜日の午後、恒例となった賑(にぎ)わい「俳句会」を開いています。
金曜日当日の朝、その日の「俳句会」を賑(にぎ)わす‘俳句の季語’を三つ、大きく紙に書いてお客様方に発表いたします。
この紙を見て毎回半数くらいの方が、「俳句 !?、反対!」・「イヤだ、もう帰る!」と言われ早やくもワイワイガヤガヤと「俳句会」の賑(にぎ)わいスタートです。
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「皆さんお静かに、先週も、反対だ、イヤだ、何だかだと駄々こねて、立派な俳句を吟まれたではないですか?今日も楽しくやりますよ。」と私、「俳句などワシャ、知らん?参加しとらん。」と福岡市南区にお住まい88才の一茶さん、何やら「ブツブツブツ‥」と脳梗塞の後遺症で不自由な指を折り、早くも五七五の17文字ワールドへ没入の94才の子規さん、どなたも無邪気で天真爛漫です。
確かに、俳句は、17文字の文学と言われるくらい奥が深く、そう簡単ではありません。
普通、趣味の俳句教室などでは、予め次の句会のテーマを告げられますから、季語も自分で選択できますが、
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私たちの施設では、当日の朝に‘季語’を指定してお知らせしますので“アタマが痛くなる”のも分かります。
認知症については、まだ医学的にも発症のメカニズムが解明されておらず、臨床医学の中で症状からアルツハイマー症型・レビー症型・小頭症型など医師が、病名を付け大まかに区分しています。
医学ド素人の私が、認知症について語るのは僭越ながら、認知症は、脳の病気で加齢によるもの、つまり脳の神経細胞に異常タクパクが蓄積され、神経の伝達に接触不良などのトラブルが発生しているか、長寿による脳細胞の委縮(老化)で最新データの書き込みに不具合が生じているか、原因は、そんな障害だろうと思います。
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病気のメカニズムが、現在の医学で分からない以上、認知症患者の主治医は、クスリの投薬で対症療法を続けるしか方法がなく、時には‘山のように’クスリを飲まされている認知症高齢者がおられます。
認知症のケアは、“介護”の世界、“医療”とくに総合病院は、認知症患者の入院を極度に嫌がります。
総合病院(開業医も同様)では常識の“医療”ルールを認知症患者にいくら説明しても理解してもらえないから(だから認知症なのに)、一対一の見守りを原則とする“介護”ルールで対応するしかないからです。
重度の認知症で理解不能の患者であっても身体拘束はご法度、些細な制約をしても虐待だと大騒ぎする世の
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中ですから“医療”は、たいへん人手のかかる(人件費コストの高い)認知症患者を避けたがるのです。
金曜日午後の賑(にぎ)わい「俳句会」の話題から脱線してしまいました。
話を戻して、お昼の休憩時間のあと午後、俳句の時間が、始まると皆様方、真剣な面持ちで、何やらブツブツ呟きながら「五・七・五」と指を折り、紙に書き留めておられます。
「俳句 !?、反対!」・「イヤだ、もう帰る!」と言われた方も、言ったことすらすっかり忘れ、指を折りながら「アタマが、痛とうなったバイ」とブツブツ独り言を呟いておられました。
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こうして出来上がったお客様の俳句をお一人1句、選者である施設長(若いころ俳句を学んだ経験者)が選び、お名前を書かず俳句だけを大きな紙に書いて掲示します。
そして、おやつの時間に俳句の発表会を行ない、火曜日午後の「絵画教室」(こちら)と同様、お茶を飲みながら‘俳句反対’‘イヤだ帰る’‘ワシャ知らん’のお客様の俳句も含め、全員の作品を紹介いたします。
金曜「俳句会」に参加されている方どなたも個人差はありますが、認知症を患っておられます。
記憶が、斑(まだら)で憶い出せなかったり、ついさっきのことを忘れたりしていても、感受性の何と瑞々しいことか‥感性の美しいことか‥いつも私は、皆様方の俳句を一句一句、感動しながら詠みあげ発表しています。
                                 ◇
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             飛行機雲  秋の青空  二等分  (要介護度3 94才の子規)
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             雲間より  雷ひとつ  それっきり  (要介護度2 91才の芭蕉)
 
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             彼岸花  燃ゆる心や  遠き夢  (要介護度2 89才の虚子)
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             蝉の声  細くなりつつ  夏終わる  (要介護度2 88才の一茶)
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             小さいの  大きいのある  零余子飯(むかごめし)  (要支援2 90才の蕪村)
明日には、どの俳句名人たちもきっとご自分の句を憶えておられないでしょう。
(付記:上から5枚と8枚目の写真は九州ロマンチック街道からお借りしました。)
by blues_rock | 2012-10-09 00:40 | 高齢者介護(認知症) | Comments(0)