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心の時空

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a day in my life

美しい夏キリシマ  シネマの世界<第92話>

もうずいぶん昔の話ですが、黒木和雄監督(1930~2006没、享年75才)のATG作品「祭りの準備」(1975)を見て感動し何度もこの映画を見ました。
それ以降、黒木監督の作品に駄作はないと新作映画もまだ見ぬうちから思ってきました。
「美しい夏キリシマ」(2003)は、黒木監督が少年のころ過ごした宮崎県小林市の霧島の見える故郷を舞台に、自らの戦争体験を脚本にして監督した作品で期待どおりの秀作映画でした。
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戦争末期の荒んだ時代に生きた黒木監督自身の少年時代を、名優柄本明の長男柄本佑(えもとたすく、1986~)が、映画初出演(オーディションに合格)ながら主演し、多感な少年時代を初々しく演じています。
中学生で学徒動員された少年は、労働奉仕していた工場が空襲され、隣りにいた友人が頭を撃たれ、自分に助けを求めたのに逃げ出した自分を苛み、自責の念に苦しんでいました。
肺を患っている少年は、宮崎の祖父に引き取られ霧島に近い田舎で暮らしていました。
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元軍人で厳格な祖父(原田芳雄)には、自宅療養中の孫(少年)が自堕落に映り、何かにつけ厳しく接します。
空襲で撃たれた友人を助けず逃げ死なせたと自責する少年は、友人の妹に会いに行き、許しを乞いますが、妹は謝るくらいなら兄の仇を討つよう言いました。
何を相手に戦えば良いのか、判らないまま少年は、竹ヤリでワラを突き、竹林に穴を掘り戸板を被せ、その中で生活します。
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やがて終戦となり、少年は進駐して来たアメリカ軍を相手に竹ヤリを振り回しながら突進しますが、彼らの一人が笑いながら威嚇発砲した銃音の大きさに驚き卒倒してしまいました。
1945年夏8月、霧島を眺める故郷は、その日も美しく輝いていました。
映画の中で、出撃を前に特攻隊の青年将校が、少年に磔(はりつけ)にされたキリスト像の絵の美しさ、花の美しさに感動する心、聖なる気持ちの理由について語るシーンには、胸打たれました。
a0212807_124933.jpg主人公である少年の脇を原田芳雄・左時枝・香川照之・石田えり・宮下順子と錚々たる芸達者の名優たちが固めているので見応えあるお薦め映画のひとつです。
モンペ姿の小田エリカと中島ひろ子が、清純でチャーミングでした。
by blues_rock | 2012-09-29 00:08 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)