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心の時空

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メランコリア  シネマの世界<第89話>

デンマーク映画界を代表するラース・フォン・トリアー監督(1956~)の新作映画(2012年日本公開)「メランコリア」(脚本と監督を担当)を紹介いたします。
トリアー監督の前作「ANTICHRIS♀(アンチ・クライスト)」を見終わったとき、鉛を呑み込んだような気分になる映画だと感想を書きましたが、新作「メランコリア」もまた見る人の気持ちを重くするような映画でした。
メランコリア  シネマの世界<第89話>_a0212807_2238645.jpgトリアー監督の映画に対する信念(ポリシー)は、「映画は靴の中の小石でなければならない」ですが、「メランコリア」でもそのポリシーは立派に貫かれていました。
トリアー監督は 人の心を重くさせる天才です。
「メランコリア」も見終わると余韻に前作と同様、足の裏で靴に入った小石を踏んでいるような、なんとも気障りな感触が残ります。
トリアー監督の言う「映画は靴の中の小石」とは、人間の赤裸々な本能と独り善がりのエゴを教える表現手段と言いたいのではないかと私は思います。
映画を見る人に小石を容赦なく投げつけたいというトリアー監督の願望は、二本の映画「ANTICHRIS♀(アンチ・クライスト)」・「メランコリア」を見ると良く分かります。
「メランコリア」は、惑星メランコリアが、地球に衝突することで “世界の終わり”に直面する姉妹の物語です。
トリアー監督の美しい映像美を堪能しながら“地球の終焉”を見るというのも映画とはいえ複雑な心境でした。
映画は二部構成になっていて第一部は、妹ジャスティンを主人公にしています。
心の病(うつ病)を抱えた妹ジャスティン役のキルスティン・ダンスト(1982~)が、実にすばらしく、見事な演技を見せてくれました。
メランコリア  シネマの世界<第89話>_a0212807_22423032.jpg「メランコリア」撮影当時、トリアー監督も持病のうつ病に苦しんでおり、まさしくその心境を代わりに演じたようなキルスティン・ダンストのうつ症状の表情が真に迫り、カンヌ国際映画祭で主演女優賞を受賞したのも頷けます。
第二部は、姉クレアが主人公、富豪の夫・息子と幸せに暮らし、何一つ不自由のない姉クレアをシャルロット・ゲンズブール(1971~)が、好演しています。
ある日、うつ病が悪化し憔悴しきった妹ジャスティンが訪ねて来ると姉クレアは、彼女をやさしく迎え支えてあげますが、地球に異常接近して来る惑星メランコリアの存在を知るとクレアは、恐怖と不安でパニックを起こすようになりました。
反対に妹ジャスティンは、月よりも大きくなったメランコリアに見惚(と)れ、顔には微笑みを浮かべています。
メランコリア  シネマの世界<第89話>_a0212807_2255430.jpgジャスティンの表情からうつ症状が消えていました。
反対に夫も息子の存在も忘れ、怯(おび)える姉クレアに妹ジャスティンは、「地球は邪悪よ。消えても嘆く必要はないわ。」と静かに淡々と語ります。
姉クレアの夫をキーファー・サザーランド(1966~)、姉妹の母親役をシャーロット・ランプリング(1946~)が演じています。
自分の家族や親族・知人に嫌われながら、憎々しい毒を吐き、悪意に満ちた行動をとる母親シャーロット・ランプリングのイヤミな存在感が、抜群で映画史に残る‘悪意’の名演技として残るだろうと想像しています。
映画は、妹ジャスティン、姉クレア、彼女の夫と息子の4人が、手をつなぎ惑星メランコリアの衝突を迎える瞬間に終わります。
「メランコリア」の不条理な心理描写に退屈し、居眠りモードに入っても、映像が美しいので、薄目を開けて見ておいて損はないと思います。
by blues_rock | 2012-09-21 00:18 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
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