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心の時空

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光のほうへ  シネマの世界<第80話>

デンマーク映画‘ドグマ95’の映画監督、トマス・ヴィンターベア監督(1969~)2011年の作品です。
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映画の日本語タイトル「光のほうへ」は、デンマーク語の原題では「Submarino」、英語ならサブマリーンで潜水艦を意味しますが、どうやら隠語のようで拷問のとき、顔を水の中に無理やり沈められ息のできない状況を意味する言葉のようです。
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デンマーク映画の秀作を次々に発表する‘ドグマ95’の映画手法については、「スザンネ・ビア ‥ デンマークの女性映画監督」で書きましたのでこちらをご参考にご覧いただければ光栄です。
当然、スザンネ・ビア監督も‘ドグマ95’のメンバーで、2011年映画「未来を生きる君たちへ」(原題、復讐)は、同年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞しました。
a0212807_058019.jpgもう一人、何かと話題を提供するラース・フォン・トリアー監督(こちら)も‘ドグマ95’の中心にいる監督です。
話を「光のほうへ」に戻すと、デンマーク社会の底辺と現実をカメラは、感情移入せずに捉え、コペンハーゲンの貧困地区から抜け出せない兄弟二人の少年期から青年期を冷徹に映し出します。
兄弟の現実は、少年のころから救いようのない環境下で生活し、大人の愛情も知らないまま成長、大人になっても真っ当な家庭もなく親しい友だちもいません。
少年時代の兄役の少年が、弟に見せるやさしい態度と大人たちに表す怒り・不信を同時に顔の表情ひとつで演技していることに感心、すばらしいと思いました。
a0212807_132153.jpg兄は、仕事がない(というより働く気がない)ので犯罪を繰り返し、刑務所との間を行ったり来たりしていました。
弟には、幼い息子がいて、息子と暮らすことを唯一の生き甲斐としながらも意思の弱さに克てず麻薬を断ち切れないでいました。
兄弟の交流はなく、二人とも孤独で孤立無援の暮らしをしていました。
映画は、2時間あまり(正確には114分)そんな映像が、ひたすら続きます。
見ていてやりきれなくなり、楽しくもない、当然ワクワクしない、おもしろくもないのですが、この映画から目が離せず、最後までじっと見入ってしまいました。
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主人公兄弟二人の悲惨な人生は、実にリアルで、映画の物語として突き放して見ることができませんでした。
映画のラストに、兄と弟の幼い息子(伯父と甥)が、自然に黙って手を繋ぐシーンに、兄は、今度こそきっと水の中から顔を上げ、弟の幼い息子と「光のほうへ(希望)」向かって生きて行くだろうと思わせてくれるヴィンターベア監督の演出に呻(うな)りました。
by blues_rock | 2012-08-22 01:10 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)