ブログトップ | ログイン

心の時空

yansue.exblog.jp

a day in my life

ユスフ三部作(卵・ミルク・蜂蜜)  シネマの世界<第77話>

トルコ映画の傑作ユスフ三部作、「卵」(2007)・「ミルク」(2008)・「蜂蜜」(2010)を見て、セミフ・カプランオール監督(1963~49才)の名前を初めて知りました。
すばらしい作品で映画は、総合芸術であることを明確に教えてくれました。
ユスフとは、三部作映画の主人公の名前です。
ユスフ三部作の監督・製作・脚本をカプランオール監督自ら担当し、カメラは全編を通して静かにユスフに寄り添い、彼の心の動きを捉えて行きます。 (下写真 : 2010年「蜂蜜」)
a0212807_20564582.jpg
音楽(サウンドトラック)はなく、トルコの大自然の音(風の音・水の音・森の音・鳥の鳴き声など)が、シンフォニーのように鳴り、トルコの人たちの暮らしの音(足の音・人の声・食事する食器の音など)が、やさしいメロディを奏でます。
映画は、三作とも地味でストーリーは淡々と展開していき、ユスフに起きる出来事の一切説明はありません。
映画を見るものが、自分の五感と理解力を研ぎ澄まし、精細な自然の色や音、大気の匂いを映像から感じることができたらこの映画の価値がお分かりいただけると思います。 (下写真 : 2007年「卵」)
a0212807_20572957.jpg映画は、映像芸術の要素、音楽芸術の要素、舞台芸術の要素、詩・文学芸術の要素と複合的に内包しており、映画館のスクリーンに映し出された映像と音が触媒となって、見るものの視覚・聴覚・感受性を融合させる総合芸術と思います。
ユスフ三部作(卵・ミルク・蜂蜜)を見て感動し‥これが映画だとわが長年の思いが叶ったようで、ついうれしくなり理屈っぽいことを書いてしまいました。
ユスフ三部作は、主人公ユスフ成長の物語を叙情的に描いています。
ユスフの成長(年齢)は、「蜂蜜」・「ミルク」・「卵」の順番ですが、映画の公開は「卵」・「ミルク」・「蜂蜜」と、壮年期のユスフから始まり青年期・少年期と彼の人生を過去へと遡ります。
彼は、母の葬儀のため仕方なく田舎へ帰ります。 (下写真 : 2008年「ミルク」)
a0212807_2134185.jpgそこで忘れていた自分の過去に出会いました。
「ミルク」(2008)は、ユスフの青年期の物語です。
母と二人暮らすユスフは、乳牛を飼いミルクを売って生活を支えていました。
「卵」(2007)は、主人公ユスフの壮年期でイスタンブールの暮らしから始まり、将来を嘱望された詩人であったユスフも今や古本屋を細々と営み暮らしていました。
ある日、田舎から若い女性の声でユスフに彼の母が亡くなったと電話連絡が入りました。
そんな彼の心の糧は、ミルクを売りながら詩をつくり、いつかイスタンブールの詩壇で詩人としてデヴューすることでした。
「蜂蜜」(2010)は、ユスフ少年とハチミツ採りの父、やさしい母との三人の暮らしが、トルコの森と自然の中で描かれます。 (下写真 : 2007年「卵」)
a0212807_2171774.png家族の情感や家族を取り巻く村人の情景をカメラは、静かにユスフ少年の今を見つめ未来へ続く物語として捉え映していました。
エンドロールでのクレジットを映しながら“音”(生活音・自然音)だけ流すセンスもなかなかの構成でした。
ユスフ三部作に出演した女優たちが皆な美しく、映画の中の彼女たちの美しさをしっかり見るのも私のユスフ三部作映画のもう一つの楽しみでした。
by blues_rock | 2012-08-16 01:00 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)