シュール・レアリスム ‥ マグリッド
シュール・レアリスムとは、現実にない世界のことで、超現実主義と訳します。
マグリッドの絵は、筆の跡をほとんど残さない古典的ともいえる描き方で丁寧に描かれています。
絵に表現されているのは、「空中に浮かぶ岩」・「鳥の形に切り抜かれた空」など現実では考えられない不思議なイメージで、本人の言葉によれば表現とは「目に見える思考」だそうです。
「言葉とイメージ」を追求したマグリットの作品は、その後20世紀の商業広告やグラフィックアートの世界に大きな影響を与えました。
1922年36才の時、幼なじみのジョルジェット・ベルジェと結婚、彼女はモデルとして多くのマグリット作品に登場しています。
マグリットの生涯は、波乱や奇行とは無縁の平凡なものでした。
残されているマグリットの写真は、常にスーツにネクタイ姿で、実際この服装で絵を描いていたといいます。
有名になっても、彼は専用のアトリエは持たずに、台所の片隅にイーゼルを立てて制作していましたが、服を汚したり、床に絵具をこぼすことはありませんでした。
シュール・レアリスムと称した無才の画家は、己が生活の外見にばかりに奇を衒(てら)いますが、ルネ・マグリッドのように、普段の生活はきわめて平凡ながら、作品に非凡な才能を発揮することこそシュール・レアリスム芸術の本質と思います。