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心の時空

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少年と自転車  シネマの世界<第60話>

現在、福岡市天神KBCシネマで上映中のベルギー(フランス・イタリア共同製作)映画です。
私が、今年見た映画の中で(今のところ)一番好きな映画です。
ジャン=ピエール(1951~)&リュック・ダルデンヌ(1954~)のダルデンヌ兄弟監督の新作映画で、2011年カンヌ国際映画祭で審査員特別大賞を受賞しました。
脚本といい、カメラ(撮影)といい、演出といい、俳優といい、編集といい‥映画センスあふれる映画でした。
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この映画のイメージ(脚本)は、ダルデンヌ兄弟が、日本を訪問したとき耳にした実話に着想があるそうです。
親から捨てられた子供が、児童養護施設に預けられ、迎えに来ない親を施設の屋根に上り、ずっと待ち続けたという実話をダルデンヌ兄弟監督のオリジナル脚色により映画「少年と自転車」は完成しました。
孤独からくる不安とさみしさの中で、必死に大人の愛にしがみつこうとする少年に、温かい手を差し伸べる大人がいるので、少年には希望があり、未来があることを暗示して映画は終わります。
一方、実話のほうは、親の迎えを待ち続けた少年は、18才になると施設を出されました。
a0212807_19252462.jpg青年となった彼は、暴力団に誘われ自分に声をかけてくれた組長に気に入られたくて命じられるまま、人を殺し捕まり刑務所に送られました。
ダルデンヌ兄弟は、脚本を書くとき‥この少年には、一緒に暮らす大人がいて、自分は独りではないと感じるようなストーリーにしたいと考えたそうです。
ダルデンヌ兄弟監督は、カンヌ国際映画祭で5年連続受賞の実績があり、そのうちカンヌ国際映画祭最高賞「パルムドール」を2度受賞しています。
ダルデンヌ監督二人の役割分担は、「一方がカメラと俳優のそばに立つと、もう一方がモニターで映像を確認する、それは交代でやり、その外は一緒に作業する」(ジャン=ピエール)そうです。
話を戻して、この映画の主役である11才の純真な少年シリルを演じたトマ・ドレ(12才)が、実に自然な動きで見事な演技を披露しています。
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ダルデンヌ監督は、撮影に入る前に出演者・スタッフと一緒に40日くらい過ごしリハーサルを行ったとインタヴューに答えていました。
とくに、シリルを演じたトマ・ドレ少年には、この映画の大事な場面で重要な役割を担う“自転車”と少年の身体とを馴染ませるため、リハーサルで少年がへとへとになるくらい長い時間自転車に乗せ、走り回らせたそうです。
映画の中で、赤い服を着たシリルが、この自転車に乗り街中を走り回りますが、映画をこれから見る人のために具体的なストーリーは、触れずにおきます。
a0212807_1926648.jpgこの映画は、見る視点によって相当異なると思います。
映画の冒頭シーンで、自転車を探しに児童養護施設を抜け出した少年(シリル)は、施設の男性二人に追われ、少年が父親と暮らしたアパートの診療所に逃げ込みました。
少年は、待合室にいた美容院経営の女性サマンサに助けを求めます。
突然、見知らぬ少年に抱きつかれ、体に必死にしがみ付かれて最初は「痛い、痛い」といいますが、少年の孤独を直感ししがみついた少年の手を振り解こうとはしませんでした。
少年は、施設に戻されましたが、サマンサは少年が捜していた自転車を探し出し、少年に届けました。
映画の物語は、ここから始まります。
a0212807_19273278.jpgサマンサのシリル少年へのまなざしの変化が見どころのひとつで、シリルの無垢な心が深く傷ついたとき、何も言わずにシリルと向かい合う女性サマンサを演じたセシル・ド・フランス(2011年映画「ヒア・アフター」に出演)の好演も映画に彩りを添えました。
映画のラストに、シリルが犯罪に利用され、事件が解決したあとに復讐されて一方的に暴行を受けるシーンがあります。
追われて逃げ登った高い木から落ちアタマを強打したシリルは、気を失いました。
現在映画は、上映中なので‥これから見られる方のために、私の話はここまでにします。
カメラは、この後の少年と自転車をじっと見ていました。
少年と自転車」は映画史に残る映画と私は思います。
by blues_rock | 2012-05-03 00:21 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)