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心の時空

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「ワールド・オブ・ライズ」と「シリアナ」  シネマの世界<第53話>

「ワールド・オブ・ライズ(原題 Body of Lies)」は、リドリー・スコット監督(1937~)の2008年作品、彼が監督した「エイリアン」・「テルマ&ルイーズ」・「グラディエーター」・「ロビンフッド」などどれも大ヒット‥面白い娯楽映画を撮るベテラン監督です。
映画「ワールド・オブ・ライズ」も期待を裏切らない面白い映画でした。
a0212807_23511147.jpg原題「 Body of Lies」の意味するとおり、嘘だけで出来上がっている国家秘密組織のスパイたちの陰謀と諜報活動による虚々実々・丁々発止の駆け引き場面が、映画に最後まで緊張感を与えてくれます。
中東のヨルダンを舞台に、イラク・イラン・シリア・ドバイに暗躍するイスラム原理主義組織のテロ活動とアメリカCIA諜報部員らが、敵味方入り乱れ、血で血を洗うスパイ活動(陰謀・諜報)によって民衆の中に隠れ姿を見せないテロ首謀者を誘(おびき)き出し逮捕するまでが、映画のストーリーです。
無人偵察機が、上空1万数千メートルから群集に紛(まぎ)れ込んだ敵の1人を探し出し、特定する米軍最新の監視テクノロジーもリアルで驚異的です。
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その探査映像を再現するリドリー・スコット監督の映像技術が、映画の展開にスリルと緊張感を出しています。
とくに映画の中で面白いのは、盗聴傍受を避けるためデジタル機器を使わないテロ組織が、CIAの最新技術をアラビアの広大な砂漠で逆手に取るシーンでした。
a0212807_0371040.jpg一方、テロ組織の機密情報は、人から人へ直接伝えるという昔ながらの原始的なネットワークに、米軍自慢の最新監視テクノロジーが、手におえないシーンも皮肉に見え面白いものでした。
諜報活動では、協力し合おうと言いながら、お互い疑心暗鬼なCIAとヨルダン情報局は、相手に自分たちの情報を与えませんでした。
最新テクノロジーに依存し強引なCIAと人間の情を利用したスパイ活動をするヨルダン情報局とは、次第に対立していきました。
中東の街中で、民衆に紛(まぎ)れた敵に囲まれ、血だらけ傷だらけになりながら、CIAとヨルダン情報局との間で孤a0212807_038422.jpg軍奮闘するCIA諜報部員役をレオナルド・デカップリオが、熱演していました。
彼は誘拐され、テロ組織指導者の拷問を受けますが、瀕死の彼を間一髪で救ったのは、ヨルダン情報局が、テロ組織の中枢に苦労して潜入させた若いアラブ人スパイの情報によるものでした。
中東を舞台にしたスパイやテロという映画は、今では新しいテーマではありませんが、リドリー・スコット監督のリアルな演出はすばらしく、この映画をたいへん面白くしていました。 
ワシントン郊外で子供二人の世話に手を焼きながら、携帯電話でテロの頻発する前線へ冷酷非道な指令を出し、自分の手柄と出世しか頭にないCIA諜報部主任役をラッセル・クロウが好演‥アメリカの傲慢さを象徴したようなイヤミな役柄を軽妙に演じていました。
a0212807_0412034.jpgヨルダン情報局長は、「嘘は嫌いだ」とCIAに抵抗しながら、テロ組織とCIAに対し一番大きな嘘(Lie)を仕掛けます。
そのクールな役どころをマーク・ストロングが、見事に演じていました。
この映画は、中東アラビア半島を舞台に原油利権と国家間争奪をテーマにした2005年の映画「シリアナ」(ジョージ・クルーニー制作・主演)と併せて見ると楽しめると思います。(写真上・下:「シリアナ」のシーン)
中東アラブ史においてそれぞれの民族・イスラム教宗派・国家利権などが、複雑に折り重なった現代の中東で、いま起きている戦争・紛争・テロの現実が、少し理解できるかもしれません。
a0212807_0451085.jpgちなみに「SYRIANA」という単語は、辞書を引いても出てきません。
アメリカの国家戦略研究所が、イラン+イラク+シリア=新国家「シリアナ(SYRIANA)」建国を画策し、その目的を果たすために名付けた作戦の暗号(陰謀と謀略のコード)名とか‥そんな大それたことを映画のテーマにして、映画を制作するアメリカという国のフトコロの深さに驚きました。
表現と言論の自由は、確かに社会規範として存在し、それを法律で保障しているアメリカは、時として善と悪、清と濁を同時に併せ呑むダイナミックな国だと感心します。
by blues_rock | 2012-03-28 00:48 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)