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心の時空

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夢のまにまに  シネマの世界<第47話>

少し前のことですが、90才の新人監督の映画「夢のまにまに」を岩波ホール(神田神保町)に見に行きました。
映画「夢のままに」は、映画美術監督として有名な木村威夫(1918~2010没、享年92才)が、90才の時初めて映画監督として長編映画に挑み、原作・脚本(共同)と併せ初メガホンを取った作品です。
映画は、総合映像芸術だと言われますが、木村監督は美術監督出身だけあって「夢のまにまに」では、映画を絵画の連続した作品のように撮り‥カットが上手く、絵画を動画としてスクリーンで見ているような印象でした。
a0212807_221811.jpg「夢のまにまに」の主題は、生と死‥いま生きているすべての人の「生(いのち)」のその先にある「死」を見据えて‥生きていればいいのだ、生きなければならないのだ、生きたくも殺された生(いのち)もあったのだ、たとえ生きていることが、つらく苦しく悲しくても、今ここに生きていれば、感じる喜びも幸せも必ずあると映画「夢のまにまに」を通して人生の大先輩90才の木村威夫監督は、見る人の心にメッセージしています。
映画では、死と相対する三つの生‥「老いて生きること」・「心を病んで生きること」・「戦争の中で生き延びたこと」が、物語となっています。
映画の冒頭と最後のシーンに映る満開の「桜」と物語の場面変わりに登場する「椿」の花が、歳月の流れを象徴的に、暗示しています。
桜満開の土手を老夫婦と家政婦の三人が、ゆっくり散歩する冒頭と最後のシーンには、もうひとつの過去と今があり‥戦争時のキズで足を引きずる老人(長門裕之)と車イスに座る認知症の老妻(有馬稲子、若い時を上原多香子)、それぞれ相手に伝えていない、つらい過去がありました。
学徒動員・原爆・敗戦の廃墟(ヤミ市)など60年前の悲惨な過去、それから60年後の繁栄した現代日本の現実を映画は、行き来しながら「夢のまにまに」の物語は、展開していきます。
a0212807_2215994.jpg生命(いのち)は、受け継がれていく、産まれて、生きて死んで‥また産まれて、生きて死んでいく生と死の連続、60年前の過去の生命と60年後の現在の生命を表現するために、映画にはウリ二つの若い女性が、登場(宮沢りえ二役)します。
ヤミ市の小さなバーのママで、結核を病んでいる若い女(宮沢りえ)と若き日の老人(永瀬正敏)、コブだらけの老木(街路樹)を毎日スケッチしている若い女性画家(宮沢りえ)と老人(長門裕之)の心の交流を背景にして物語は、展開していきます。
心を病んで(統合失調症)死ぬ青年(井上芳雄)と息子の母(桃井かおり)、ヤミ屋(浅野忠信)ほか‥映画の鈴木清順監督、能の観世榮夫などワンシーン出演の役柄ながら名優ぞろいで見応えがありました。
a0212807_221514100.jpg映画の中で心を病んだ青年が、「無言館」と「知覧特攻平和記念館」を訪ね、「何で死んだ!」と慟哭(どうこく)するシーンがあります。
木村監督は、当時の若者が自分の意思を封印し、お国のためと若くして無念のうちに死ななければならなかった悲痛な叫びとして、自分の思いと重ね合わせ、死者に代わり、彼に無念の慟哭をさせたのでしょう。
「無言館」・「知覧特攻平和記念館」は、2011年11月24日「無言館の戦没画学生」(社会/歴史)で、すでに話題にしましたのでご参考にしていただけると幸いです。
まだ行かれたことのない方は、映画をご覧になると参考になると思います。
すばらしい映画です‥二重丸で推薦いたします。
by blues_rock | 2012-03-01 00:00 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)