007のモデル ‥ サマセット・モーム
今のように、音楽携帯のipodやCDウォークマンがある時代ではなかったので、バスと電車で通学した片道一時間半の有効活用は、文庫本を読むことくらいでした。
どんな本を読んでいたか‥ほとんど憶えていませんが、なぜかサマセット・モーム(1874~1965没、享年91才)の作品は、結構読んだことを憶えています。
「人間の絆」・「月と六ペンス」・「要約すると」‥など平易な文章で読みやすかったからでしょうか。
しかし小説の内容については、憶えておらず、サマセット・モームという人物のクールな印象だけが、漠然と脳裏に残っています。
ぼんやり記憶しているのは、モームの人間に対するかなりシニカル(冷笑的)な視点と人生は無意味で無目的なもの‥と達観する冷徹さくらいです。
子供の頃両親を続けて亡くし、嫌悪していた叔父に預けられ育てられた少年時代、吃音(ドモリ)に悩み、コンプレックスに苦しんだ青春時代、モームの人間嫌いとも思えるシニカルな性格は、徐々に形成されたのでしょう。
イアン・フレミング(1908~1964没、享年56才)原作の「007シリーズ」ジェームス・ボンドは、イアン・フレミング自身もスパイでしたから、サマセット・モームのスパイ時代が、モデルとも言われています。
サマセット・モームの人間に対する視点は、シニカルで人生は無意味・無目的としながら、長寿で亡くなったのですから‥人生は、終わり良ければすべてよし、で幸福な人生だったろうと思います。
完璧には、一つの重大な欠点がある。
退屈になりがちなのだ。(モーム)