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心の時空

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a day in my life

地球環境学者 レスター・ブラウン

a0212807_348866.jpg私が、レスター・ブラウン氏(1934~77才)に魅かれたのは、1984年の著書「誰が中国を養うのか」を読んでからでした。
当時の日本は、バブル経済にどっぷり浸かり、地価高騰という土地神話に酔い痴れ、世界中の不動産物件の買占めに奔走、そして飽食と浪費に明け暮れていました。
国民は、総中流階級意識でピーヒャラ浮かれ踊り‥日本円で買えないものはないと豪語し、傲慢になっていました。
バブルが崩壊すると日本経済は一気に奈落の底へ‥現在、日本の株価は、当時の‘5分の1’の水準で低迷しています。
日本の経済は、収縮したままデフレ脱出の糸口もつかめず、20数年苦しみ続けています。
この著書の発表当時、原油の価格は1バレル20ドル台(現在100ドル)で、著書のあまりの衝撃的な内容に日本のほとんどの人たちが、反発し嘲笑するか、あるいは無視しました。
私は、本を読んだ時、傲慢な覇権国家アメリカにも明晰な知性を持った優秀な人もいるんだなと感心したことを憶えています。
レスター・ブラウン氏は、今や地球環境学者として世界的に有名になりました。
それだけ地球環境破壊の現状が、彼の解析した悪化の予測よりずっと早いスピードで進行しているからに他なりません。
5年前の2006年5月25日、立教大学大学院で「持続可能な未来環境~水・食糧(農業)・自然・人類」と題したレスター・ブラウン氏の講演を聞く機会がありました。
世界は、深刻な問題と課題に直面していますが、講演の内容は、それに対する人類の未来への提言でした。
レスター・ブラウン氏は、自ら世界中の現地に行き、自分の目で現場を調査された事実を元に仮説を立てられ、その証明には、具体的な統計数字で分析されており未来環境の予測と提言は、説得力と迫力があります。
a0212807_352498.jpg講演は、実に明解で明晰です。
ゆっくりそして確実に、人類滅亡の淵に向かう、地球の生態系バランス破壊の実態、絶滅が加速し減少続けていく種の事実、厳しく難しい課題を、平易な言葉で未来の主人公である次世代の人たちに分かるように話されるので、しっかりと聞く者の心に入ります。
1.世界人口の5%を占めるアメリカが、地球資源33%~40%を消費していたが、中国はいま鉄でアメリカの3倍、食肉で2倍を消費している。
25年後の2031年(今年30才の人が55才の近未来‥遠い将来ではない)中国の14~15億人が、現在の中国経済成長(現在の10%台が少し落ち8%の成長で推定)するなら、アメリカ人1人当たりの消費量で計算すると、世界穀物全生産量の70%、紙の200%を消費するが、もう地球のどこにもそんな土地も森林もない。
自動車は、アメリカでは4人で3台所有(日本は2人で1台)している。
中国が、それを望み実現しようとしたら11億台の自動車が必要となる。
現在、世界全体の自動車総保有数は8億台だが、2倍近い自動車数となる。
それだけの自動車を走らせる原油は、地球のどこにも埋蔵していない。
2.インドの人口はやがて中国を上回り、現在BRIC'S4国の人口は30億人、全世界人口の半分を占める。
3.20世紀までのオールドエコノミー・パラダイム(生活価値観)からニューエコノミー・システムに変革しなければならない。
自分たちが、地球の住人でありたいなら、地球環境では観客や応援団ではない。
a0212807_352519.jpg(右写真は、上が1968年当時のチベット高原とエベレスト、下は2007年の風景)
4.西ヨーロッパでは、風力発電で2千万人が生活し2020年までに2億人が、暮らせるようになる。
例えば、アムステルダムでは、市内の交通移動の37%が自転車で、インフラも整備されている。
日本のエネルギー資源は、地熱であり世界最大の資源国、全国に1万以上の温泉が湧く国は、他にはない。
寒冷な国アイスランド全建物の85%は、地熱暖房である。
海外の遠い国から輸入する残り少ない原油に依存せず、各地域に豊富にある、太陽光・風力・水力・地熱など、自然の中で循環する電気エネルギーに転換すべき時である。
21世紀になり、日々枯渇に向かう原油は60ドル(注、2011年現在100ドル)を越え価格が、高留っている。
この価格であれば、エタノールもバイオ・ディーゼルもコストに見合ってくるだろう。   
5.自分(レスター・ブラウン氏)は、古代文明の跡地に行き、そこでなぜ繁栄した古代文明が滅亡し消えて行ったかを考える。
どの古代文明にも必ず滅亡した理由(サイン)がある。
a0212807_454241.jpg(下写真は、地熱発電先進国アイスランドの地熱発電所)
高度に繁栄した古代文明シュメール国家は、潅漑農業による土壌の塩害汚染で滅び、マヤ文明も古代都市生活を維持するための森林伐採で耕地の表土が流され、食料の再生産が不能となり滅亡した。
6.新エネルギーとして期待されるエタノール・バイオディーゼル燃料も、新たに食料問題として火種となった。
ブラジルで生産する砂糖の50%がエタノール用原料であるが、価格が1年前の2.5倍と高騰している。
大豆・トウモロコシ・パームなどエタノール・バイオディーゼル燃料用原料供給のため大規模生産農地が必要となり、世界の「熱帯雨林」が開墾開発され、地球気象に影響が出るようになってきた。(台風・ハリケーン・サイクロン・旱魃など広域で多発、同時性)‥商品市場は、もっと自然の生態系を知らなければならない。
7.スエーデンは、国家目標として2020年オイルフリー(原油ゼロ)にすると宣言した。
ノルウェーのオースティン氏は、「エコノミー(経済)の真実を伝えなかった共産主義は滅亡した。エコロジー(環境)の真実を伝えない資本主義もまた崩壊する。」と警告している。
a0212807_4195810.jpg8.生存しえる持続可能な自然環境と生態系保護のためには、貧困撲滅も重要なもう一つの仕事である。
最貧国・貧困地域の人口抑制コストは、680億ドル(7兆5千億円)、自然環境生態系の維持コストは930億ドル(10兆円強)、この合計1,610億ドル(17兆7千億円)があれば、現在の問題解決ができ、未来に生きる人類のプログラムを示すことができる。  (上の写真は、パリ市の自転車レンタル・システム)
9.アメリカの軍事費は、5千億ドル(55兆円)全世界軍事費の50%を占めている。‥これは、冷戦構造下の国家対立の軍事費である。
現実に、高額高性能ハイテク武器に巨大なコストを支払っても、テロに対応できていない。
その日その日の食事が満足にできない貧困の民(収入の70%以上が食費)は、推定で20億人と推定される。その最貧国・貧困地域にアメリカが、軍事費の20%を世界の貧困国・地域に食糧・医療等として支援提供すれば、アメリカは真に世界のリーダー国家として敬愛されるであろう。
a0212807_424113.jpg(左写真は、スペインの太陽光発電設備の風景)
10.講演の最後にレスター・ブラウン氏は、「時間が私たちの最も大切な資源である。エネルギー資源を太陽に求めれば、太陽と同じ時間持続可能になるであろう。」と私たちにメッセージされた。
以上が、講演の要約です。
2006年5月以降、世界では“想定の範囲外”の予期せぬ出来事が、次々に発生しました。
アメリカ経済の破たん(サブプライム崩壊・リーマンブラザース破産など)、ユーロ経済圏諸国の財政破たん、日本では東日本大震災と「レスター・ブラウン予想」に追い打ちをかけるかのように世界(地球環境)の悪化は進行しています。
by blues_rock | 2011-12-30 04:35 | 自然/農耕/食料 | Comments(0)