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心の時空

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a day in my life

散文詩:赤いゴム長靴

   「赤いゴム長靴」  筑紫里子 詩

ふるさとの川は  美しい宝石  その生涯の短い時間に
夏休みは毎日泳ぎ  貝を捕り  小魚を追い遊んだ川
小学1年生の時  大きな台風が襲来し  川は決壊氾濫した
川の橋も流された
子供らは村の公民館に集まり集団登校
皆で手をつなぎ一列にならんで  川を横切り渡るため
のん気な時代で  下校時間はそれぞれ自由
濁流ゴウゴウの川を渡っていると
手にもった赤いゴム長靴が  片方ポトリと川へ落ちた
貧しい母が買ってくれた  大事な赤いゴム長靴だ
アッという間に  スゥーッと流れたa0212807_12422446.jpg
いやだとあわてて手を延ばし  拾おうと
川の中を急いで  二、三歩追いかけた
その瞬間  川底の石に足取られ  体が沈み濁流の中へ
赤いゴム長靴は目の前を  プカプカ浮き沈み流れて行く
私の体は赤いランドセルごと流されて
もう片方の赤いゴム長靴は  必死に離すまいと左手に
何も感じない  恐くもなくて  しばらくそのまま流さて
川の流れは緩急あって  青い空に太陽が見えた

ああ  私はどうなるのかな
小さな子供が川に流されて  溺れ死んだと
校長先生や両親が  川には注意するよう言っていた
私もそうなるのかな  死んで話題になるのは嫌だな
小さなダムをトントン場と呼んでいた
トントン場まで流されたら  助からないと言っていた
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もうすぐトントン場だから  助からないのかな
流されながらのん気にそんな風に思っていた
突然  川の真ん中から
なぜか一気に川岸の方に押し流されて
延した右手に何かが触れた
川面に垂れた柳の小枝を掴んだようだ
これを掴みなさいと言わんばかりに
とっさに捕まるとすると  またどうしてか
ずぶ濡れの重い体が  川岸の浅瀬に打ち上げられた
川の水面の下から  私を持ち上げる力がないと
ランドセルごとずぶ濡れの重い体は上らない
スゥーッとイルカのジャンプみたいに
真っすぐに体が浮かび上がり  小さな浅瀬に打ち上げられた
助かるための努力もしないで
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あの時の感覚は  あの時の微妙な感触は  言葉では現せない

小さな浅瀬の上で  私は泣いた
ゴウゴウと流れる川の濁流の側で
真っ青な空を見ながら何の思いもなく  ただ大声で泣いた
赤いゴム長靴もランドセルも  もうどうでもよかった
みっともない格好で  泣いたことだけ憶えている
助かってうれしいのでもなく  怖かったからでもなく
流されて失くした  片方の赤いゴム長靴でも
ずぶ濡れのランドセルのことでもなく

私はここにいる  と大声で泣いた
ただならぬ泣き声に  近くの製材所のおじさんが驚いて
飛んで来て助けてくれた  一人では上がれない浅瀬から
向う岸から幼なじみが  私の名前を大声で叫んでいた
a0212807_12471139.jpg家までの帰り道は  製材所のおじさんがおぶってくれて
背中で泣き続ける私に  もう大丈夫だと
やさしく慰め続けてくれた  遠い昔の話

製材所のおじさんはもういないだろう

もっと早く懐い出して  あの時の御礼を言いたかった
幼なじみは 元気でいるだろうか  憶えているだろうか
by blues_rock | 2011-10-11 06:36 | 詩/短歌/俳句/小説 | Comments(0)