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心の時空

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a day in my life

菱(ヒシ)の実

私は、筑後平野に生まれ大学を卒業するまで暮らしていました。
秋になるとボイルした「菱(ヒシ)の実」を良く食べたものです。
一昨年、東京で定年を迎え故郷の福岡へ還り、今年もまた昔懐かしい秋の味覚を愉しみました。
二つの鋭いトゲを避けながら、硬い外皮を包丁で真ん中から二つに割るとでんぷん質の白い子実あり、これをスプーンで掬(すく)いながら食べます。a0212807_22482140.jpg
食感は、クワイやユリネに似ていますが、ホクホクとした感じはクリを少し淡白にしたような味で、筑後平野の秋の味覚を愉しめます。
小学校唱歌で歌われる「里の秋」の‥ああ母さんとただ二人/クリの実煮てます/囲炉裏(いろり)端、と続くクリの実がヒシの実に取って変わると思えば、その雰囲気を感じていただけると思います。
子供の頃、筑後平野には、稲作のため田んぼに水を引くクリーク(細長く続く堀割)がたくさんあり、平野の中を縦横に流れていました。
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クリークには、ヒシや布袋葵(ウォーターヒヤシンス)が繁茂しており、水面いっぱいに茎や葉を広げ可憐な花を咲かせていました。
私の子供の頃、トモダチと夏の間いつも、そのクリークで泳いだり、フナやコイを釣ったりして遊んでいました。
a0212807_22493832.jpg秋になると両親や親戚の大人たちは、木造タライ(私の記憶に間違いがなければハンギリとかバンコとか呼んでいたような気がします)に乗り、クリークに漕ぎ出してヒシの実を採っていました。
収穫したヒシの実は、秋の味覚として家族や親戚と一緒に食べたり、隣近所にお裾分けしたりしていました。
ヒシの実は、筑後平野の特産品で、故郷の秋の味覚と長年思っていましたが、昔アイヌの人たちも盛んに食べていたとの伝承があることや、現在でも全国各地の沼や池で生育しているとのことなので、どうやら私の思い込みだったようです。
それでも私にとってヒシの実は、クリの実より故郷筑後平野の秋を届けてくれる味覚です。
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君がため

浮沼(うきぬ)の池の

菱(ひし)摘むと

我が染めし袖

濡れにけるかも


万葉集
柿本人麻呂
by blues_rock | 2011-10-07 06:55 | 自然/農耕/食料 | Comments(0)